783 余裕綽々 ページ26
エルドラドチームのキックオフで試合開始。
「《ミキシトランス・坂本龍馬》！」
「《ミキシトランス・沖田》！」
FWの二人は初手からミキシトランスで挑んでいく。
背後に控えているフェイと黄名子は、敵の出方を窺っているようだった。
剣城から錦へパスが通る。錦はそのままザナークの方へ向かっていったが──ザナークは棒立ちのまま、錦が横を通過するのを許した。
そして、次の選手も。チーム・ザンは、エルドラドの攻撃に何の対処もしない。
ボールは剣城へ。ディフェンスラインを突破し、一直線にゴールへシュートを放つ。
しかし大柄なキーパーは……それを片手でいとも簡単に止めてみせた。
「だから他の選手は手を出さなかったのか……なんて奴らだ！」
神童が前に身を乗り出して呟く。
キーパーには、ミキシマックス状態のシュートを簡単に止められる力があったから。言わば力を見せつけるための棒立ちだったのだ。
キーパーが投げたボールを、フェイがトラップ。そして剣城へパス。
剣城は再度ゴールへ向かい合った。その目に闘志をみなぎらせて。
「『菊一文字』！」
しかしこれも結果は同じだった。キーパーは必殺技を出すことなく、シュートを防いでしまう。
──なんという守備力だ。しかし愕然となっている暇はない。
投げられたボールをダーナが取った。しかし「ウォードにパスだ！」という剣城の指示には従わず、青山へボールを回す。
剣城は前線へ上がり、青山からパスを受け取った。
「剣城があんなに積極的に……」
クロエの言葉に頷く。今の剣城のプレーには、キャプテンとしての立場というものも少なからず影響しているだろう。
確かに、剣城がシュートを決めればチームに勢いがつく。しかしなぜ敵は、剣城たちにここまで自由にプレーさせるのか？
「『剣聖ランスロット』──《アームド》！」
アームド状態でのシュートが放たれる。ここで初めて、キーパーは技を──化身を出現させた。
「『深淵のアギラウス』──『ギガバイトスクリュー』！」
そうして渾身のシュートをあっさりキャッチ。挑発するかのように不敵に笑って見せた。
アームドを解いた剣城は肩で息をしていた。三本連続でシュートを打ったその身体には、早くも疲労が蓄積しているに違いない。
ミキシマックスもアームドも通用しない……一体ここから、どうやって点を奪えばいい。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
