782 開戦、ラグナロク ページ25
そんな最悪な空気の中、ろくにチーム全体としての練習ができるわけもなく。
雷門メンバーだけで連携の確認はしたものの、もやもやした気持ちを抱えたまま翌日を迎えた。
私たちは特設の観客席から試合の様子を見守ることになった。
開会セレモニーからすでに、会場のボルテージは最高に近いところまで達していた。客席はびっしりと埋まっていて、エルドラドコールがひっきりなしに続いている。
数万人単位の観客を集めたのは、
三回ある戦いのうち、どちらかが先に二勝した時点で勝敗は決する。もし一勝一敗一分けとなったらその時は……どうなるのだろう。
数発の花火を最後に、開会セレモニーが終わりを告げる。
第一試合に出場するのは剣城たちのチームだ。対して
「あ……フェイ、大丈夫そうだね。よかった」
センターラインを挟んで整列したチームの中にフェイの姿を見つけたクロエが、声を上げる。
私も胸を撫でおろした。顔色も元に戻っている……万全の状態で臨めるだろう。
そこで相手チームがローブを取り払った。
そして──列の先頭に立ち、キャプテンマークを左腕に着けた人物の顔を見て、私たちは目を丸くする。赤みがかった褐色肌、深緑色の髪──鬼神を彷彿とさせる風貌。
「ザナーク？！」
圧倒的なパワーをもってして私たちの行く手を遮った、ザナーク・アバロニク。その本人に違いなかった。
最後に姿を見たのは、幕末の時代か。その時から今まで、一体あいつにどんな出来事があったのだろう。かつて起きた力の暴走と、何か関係があるのだろうか。
「なんであいつが
「あいつは元々エルドラドに忠誠を誓ってるって感じでもなかった……自分にとって利益がある方に、鞍替えしたのかもしれない」
狩屋の言葉に、私は半ば呆然となりながらそう返した。
ただ、フィールドの様子を見る限り……錦は、またザナークと戦えることに燃えている様子であった。
エルドラドチーム01対、チーム・ザン。
両者の命運をかけた第一試合が、今──始まろうとしていた。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
