780 修復不可能な ページ23
その時、後ろでドサリと何かが倒れるような音がした。そしてそれは実際に──フェイが倒れた音だった。
私たちは息を呑み、フェイを取り囲む。血の気の失せた顔は苦しそうに歪められていた。
「フェイ、しっかりするやんね！」
「どうしたの、フェイ？！」
みんなのフェイを呼ぶ声が、夕空に吸い込まれて消えていった。
＊
フェイはひとまず、宿舎の寝室へ運ばれたようだった。私たちとは宿舎が別だから、お見舞いに行くことはできない。知らず疲れが溜まっていたのだろうか。
黄名子たちもついてくれているから、きっと大丈夫なのだろうけど……。
それからすぐにミーティングが行われることになった。チームのメンバーが席に着く。
「そうだ、クロエ……さっきはありがとうね」
私は隣に掛けたクロエにそう言った。クロエは目を瞬かせていたが、私がエルドラド崩壊での一幕のことを言っているのだとわかると、軽く肩を竦めてみせた。
「うん──あれはさすがに危なかったね」
危なかった。本当に。クロエが助けてくれなかったら、怪我じゃ済まなかったかもしれない。
あれが火事場の馬鹿力というやつだろうか。なんだかクロエがどんどんたくましくなっていくような感じがある。
神童が前に立ったのを見て、私たちは口を閉じる。
「──
「ふわあ……眠くなっちゃいました」
ベータがあくびをしながら立ち上がった。それを倉間が見咎める。
「おい、まだ途中だぞ」
「敵の情報がわからないんじゃ、ミーティングの意味ってあります？」
「……おやおや。怖くなって逃げるのかい、ベータ？」
ガンマが言って、席を立つ。その顔には嘲笑が張り付いていた。
「ムゲン牢獄でレベルアップした私を、前と同じだと思っちゃったりしてます？」
「レベルアップしたのが君だけだと思うかい？」
「……今度は仲間割れかよ」
倉間の呟きを聞いて、私は無意識に軽く下唇を噛んだ。
どうして顔を合わせるたびに反発するのだろう。今この時だけでも最低限の協力をしようという考えはないのだろうか。自分たちがフェーダの支配下に置かれても、滅亡してもいいのだろうか。
赤々としたものが腹の底から沸き起こってくる。私はその感情をどうにか抑えようと試みた。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
