779 最後の舞台 ページ22
「じゃあ準備に移ろう」
SARUがそう言うと、
彼らの身体が妖しく発光したかと思った次の瞬間──信じられないことに、目の前の瓦礫がひとりでに浮かび上がる。
科学も物理法則も無視したその挙動に、一同は愕然とするしかない。
私たちが呆然と見守る中、大小さまざまな瓦礫は、新たな建物を形作っていく。
それは──巨大なサッカースタジアムだった。
「さあできたよ。決戦の舞台、ラグナロクスタジアム。ここが新しい世界の始まりの場所になる！」
これが
「このスタジアム内に、君たちの居場所も作っておいた。君たちが好きなように使える生活スペースや練習施設なんかをね。ラグナロクの間、エルドラドのミーティングルームとして使ってよ」
それは公平を期すための措置なのだろうが、私たちにせめてもの温情を与えているようにしか見えなかった。
と、私はそこで、フェイの様子がおかしいことに気が付いた。頭に手を当て、苦しそうに眉間にしわを寄せている。小声で呼びかけてみたけれど、私の声は届いていないようだった。
「元々エルドラドのビルを壊して作ったんだからお前らのもんじゃねえのに、偉そうにさ……」
そうぼやいた狩屋はSARUに軽く睨まれ、小声で悲鳴を上げて口をつぐむ。
「では第一試合は明日。しっかり準備しておいてね？ まあ無駄だろうけど……」
「へっ、明日なんてタルいこと言ってねえで、今ここでアイツらをぶっ潰してしまおうぜ？」
SARUの言葉に呼応するように、
しかしSARUがその腕を掴んだ。「ガロウ」と低い声で名を呼ばれると、そいつは大人しく引き下がる。
「約束する。ラグナロクで僕たちはこの力を使うことはない。この力を使わずとも、僕たち
明日が楽しみだよ──SARUはそんな言葉を残して踵を返した。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
