778 終わりの始まり ページ21
「クロエ……？！」
私の膝裏と背中に手を回し、額に汗を浮かべながら、クロエは真っすぐ前を向いて駆け出した。
その瞬間、私のいた場所に巨大な瓦礫が降り注ぐ。土埃が私たちの髪を巻き上げた。
クロエは、人ひとりを抱え上げているとは思えない速さで、ワープポイントに飛び込んだ。
一瞬の浮遊感の後、からくも脱出することに成功する。
クロエに抱えられたまま振り向けば、最新鋭の技術で建設されたのであろう建物が、紙屑も同然のように沈んでいく。
こうして……一瞬のうちに、エルドラド本部は呆気なく崩壊した。
＊
「悪魔どもめ……！」
夕日が瓦礫の山を橙色に照らし出す中、サカマキ監督の恨みがましい声が低く響く。
さっきまで本部だった残骸の上に、十名ほどの人間が立っている。それは私たちと同い年くらいの少年少女だ。
そしてその中央に立つ少年の顔を見て、私と天馬は息を呑んだ。
「あの時の……！」
彼は間違いなく、私たちに弥生時代で接触してきた──SARU、もといサリュー・エヴァンに間違いなかった。
SARUは「やあ」と、友人に会った時にするような気軽な挨拶をする。
「SARU、君は
「そうだよ。僕は
ぞくりと背筋が粟立った。その爽やかな表情で、エルドラド本部を崩壊せしめたというのか。
「皇帝って……それってフェーダのリーダーってこと？」
「そう、この僕がフェーダのリーダー……そしてもうすぐ、世界のリーダーになるんだ。覚えておいて？ 天馬」
逆光になっていても、SARUがその顔に微笑を浮かべているであろうことが分かる。
自らの存在証明のためなら、人類が滅ぶことも厭わない。そんなフェーダの皇帝が私たちに伝えたかったこととは、一体──。
「ラグナロクの開会式セレモニーは楽しんで頂けたかな？」
「サッカーで勝負するんじゃなかったのか？！」
「もちろんこれからサッカーをやるよ。世界を変える最終戦争──ラグナロクをね」
神童の言葉に、SARUはそう宣言した。自分たちの勝利を確信したような表情で。
彼らの脅威を目の当たりにした私は、確信する。エルドラド本部を襲撃したのは、
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
