777 突き上げる地響き ページ20
すぐそばでは剣城とクロエが話をしている。
「どう？ 上手くやれそう？」
「まあ、連携はまずまずといったところだな……三国さんたちもパワーアップしていたから、このまま詰めていけば試合には間に合う。
監督たちがどういう意図で俺をキャプテンにに選んだのかはわからないが……俺は俺のプレーをするだけだ」
剣城の言葉に、クロエはどこか満足そうに頷いていた。
「うん、剣城はそういう感じの方が向いてると思う。真っすぐなプレーをすれば、その背中を見たみんなにも火がついて、後ろをついてきてくれるはずだよ」
切れ長の瞳が僅かに細められる。クロエの励ましに、少し元気づけられたようだった。
二人の間には穏やかな信頼関係が生まれているみたいだった。それは恋心とは似て非なるものなのかもしれないと、外から見て思った。
いや、だけど。
──好きだけどさあ、彼女が人間じゃないって、剣城が可哀想じゃん。
アーサー王の時代で漏らした、クロエの呟き。その口調があまりにもあっさりしていたから、私はそれ以上突っ込むことはできなかったけれど。
叶わない恋、なのだろうか。化身は人間と一緒になることはできない……それは多分、揺るがしようのない事実となってしまうから。
……いけない、今は気持ちを切り替えなければ。
さあ、今日も練習を。それぞれの思いを胸に抱いて、フィールドに向かおうとした。
──その瞬間。
「うわあっ？！」
轟音と共に、地面が揺れた。バランスを崩した私はたたらを踏む。
あちこちから悲鳴が上がる中でも、揺れは止まらない。この振動は、地震と呼ぶにはあまりにも大きすぎる……！
一体何が起こっているのか。突然の異常事態に、私の頭は混乱するばかりだった。
とにかく建物の中にいては危ない。すぐに外へ出なければ。
「こっちです、早く！」
太陽が、緊急脱出のためのワープ装置へみんなを誘導している。
そちらへ足を向けようとした私だったが、その瞬間に強い揺れが建物を襲い、床が傾いた。足が滑って転倒してしまう。
「A！」
私の名前を呼ぶ声、誰かが駆け寄ってくる足音、瓦礫が崩れる音。耳へ入ってくる情報量の多さにパンクしそうになりながら、どうにか身を起こそうとする。
しかしその時。私の身体が、ぐいっと浮かんだ。
横抱きにされたのだ。咄嗟にしがみついた私は、その顔を見て素っ頓狂な声を上げる。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
