775 敵意剥き出し ページ18
昼の練習が終わり、私はクロエと一緒に女子トイレへ向かったが……道中で溜息が何度漏れただろう。
あれからも当然プレーが繋がるはずもなく──天城さんなんかは怒りが爆発する寸前だった。
「あと二日かそこらで、連携をある程度のレベルに引き上げられればいいけど……二日どころか二年かかっても無理そうな感じじゃない？」
クロエの言葉につい頷いてしまう。
「ただでさえこのチームはエルドラドメンバーが占める比率が大きいし……個々の能力がどれだけ高くても、統率が取れてなきゃ……」
エルドラド側はアルファとエイナム、ベータとオルカ、ガンマとルジクとガリングで、はっきりと三つに派閥が分かれてしまっている。
神童は、どうやってチームをまとめていくだろう。私も何か力になれることがあればいいのだが。
思案しながら女子トイレに入った私は、入口のところで足を止めてしまった。
ベータとオルカが、洗面台の鏡で髪型を直しているところだった。
「なに、ジロジロ見て。言いたいことあるんならはっきり言ってくれる」
オルカに凄まれた私は一瞬たじろぐ。だけどここで無視してすれ違うのもなんだったので、意を決して言葉を紡いだ。
「この前まで敵同士だったっていうのもあるし、私たちはなにも手を取り合って仲よくしようって言ってるんじゃない……でも今は同じチームなんだから、最低限の連携くらいは」
「えー、それって私が貴方たちのお粗末なプレーレベルに合わせろって言ってるんですかあ？」
トイレの壁に反響するくらいの大きな声で、ベータが遮った。
……やっぱり、言葉での説得は無謀のようだ。同じ場所にずっといるのもいい気分はしないし、別のお手洗いに行こう。
踵を返して立ち去ろうとしたとき、ふとクロエが一歩前に出る。
「私たちもこの旅の中で強くなってる。Aも時空最強の力を手に入れた──そこまで貶されるいわれもないんだけど」
「ええっ、貴方が？！ おもしろぉい、一体どんなへっぽこな歴史人物のオーラを手に入れたのか、興味深いですわ」
「……ベータ、あんたでかい口叩いてるけど、信長の時代で一回私たちに負けてること忘れてない？ 今戦っても、その時と同じ結果になるんじゃないの」
その瞬間、ベータの顔つきが変わった。『負け』という単語が琴線に触れたようだった。
ベータはクロエの胸倉を掴む。そうして顔を真っ赤にしながら怒鳴り散らした。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
