774 派閥同士の諍い ページ17
私はこちらに迫ってくるベータの攻撃を阻止するべく、腰を落とした。
視線が一瞬交錯する。般若のように険しい目線に怯みそうになったが、どうにか持ち直して切り込んでいく。
そして──スライディングでカットすることに成功した。ボールがタッチラインを超えていく。
耳元で、隠そうともしない舌打ちの声が聞こえた。
立ち上がった私は、ベータがじっとこちらを睨んでいるのに気づき、眉をひそめる。
「なに？」
「べっつにぃ〜。貴方ごときにボールを奪われて、はらわたが煮えくり返りそうなほど不快だなんて……そんなこと、これっぽちも思ってませんわ」
自分の髪を弄ぶその仕草は、あきらかに苛立ちを示していた。
──どうやら私は本気でベータに目の敵にされているらしい。仮にも同じチームなのだから、こんなことでは連携もくそもないのだが……。
「ガンマ、今のは何だド！ 神童がパスって言ったの聞こえたはずだド！」
プレーの途切れた合間に、天城さんがガンマに抗議する。
「……だったら何か？」
「なんだド？！」
「この際だからはっきり言っとくけど、僕には君たちと一緒に戦うつもりなんかこれっぽっちもない」
清々しいほどの決裂宣言だった。
ばっさりと切り捨てられてしまった天城さんの眉間に青筋が浮かんだ。天城さんはそれでもどうにか説得を試みる。
「確かにこれまでは敵だったけど、今は同じチームのメンバーだド！ チームが一つにならなきゃ、フェーダには勝てないド！」
「ノー。私たちなら勝てる」
──そしてそこに別の声が闖入した。アルファだ。
「私とベータとガンマは、エルドラドの再教育機関である『ムゲン牢獄』でレベルアップを図ってきた。今の私たちにはフェーダなど敵ではない」
「ちょっとお、私たち私たちって一緒にするのやめちゃってもらえます？ 私とあなた方ではレベルが違いますよ」
「ま、みんなそれぞれ好きにやればいいんじゃないかな」
締めのガンマの言葉に、「おいおいこのチーム大丈夫かよ？」と狩屋が漏らす。
エルドラド勢力と雷門が相容れないのはまだしも……エルドラドが内輪で揉めてしまってはどうしようもない。
いよいよもってサカマキ監督が、なぜ我の強いこの三人を同じチームに入れたのかがわからない。いや、チーム分けには鬼道さんと豪炎寺さんも関わっていたか……。
神童の方を見る。チームのキャプテンとして、どうしたらこの状況を打開できるか思案している表情が、そこにはあった。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月5日 21時
