Word.0059 責任 ページ9
次の来客はそれから数時間後。通路を歩くヒールの音がしたかと思ったら、キジが入ってきた。
「調子はどう？ って言っても、いい筈はないわよね……」
哀れみの視線を向けられた──ように思った──私はムッとしたが、しかしそれも一瞬のことで、怒りの感情も虚無が黒く塗りつぶしていった。
キジは、新年大会の一件でハジメが三日間の謹慎処分になっていること(今は二日目)、今日は自分が十三舎の主任代理であることを教えてくれた。
だから私の様子を見に来たということか。得体のしれない力を持つ、不気味な囚人の様子を。
キジは私の右手側に設置されている椅子にかけた。そうして、何かを思案するような表情で言葉を投げかけてくる。
「犬士郎から聞いたわ、色々。私はアンタのことをよく知らないから、長々と説教垂れるつもりも同情するつもりもないけどね……」
ただこれだけは言わせてちょうだい。そう前置いて、グロスの塗られた唇を開いた。
「自分の人生に、最後まで責任を持ちなさい。道を歩いていくのも逃げるのも、最後には自分で選択することなんだから。そのへんのことを他人任せにしようだなんていう、甘い考えは持っちゃ駄目よ」
イエローの瞳が真っすぐにこちらを射抜いてくるのに、私はふいと目線を逸らした。
──結局、説教をするんじゃないか。霧のかかった思考で、そんなことを思う。
じゃあ私以外の他のみんなは、人生に責任を持って生きているのだろうか。そう言いたくなったけれど、私は手元のペンにこう記すだけに留めた。
『囚人の処遇は看守が決めることでしょう』
文面を見たキジの眉が顰められる。扱いが困るという思いが、厚化粧の顔にありありと現れていた。
死にたいとどんなに願っても、最終的に私の行く末を決定するのは刑務所だ。そう思うとどうしようもない虚無しか心の中には残らない。
「……明日は猿門が来るけど、あいつはガッツリ喝を入れるんでしょうね」
キジは私の問いには直接答えず、そう言い残して立ち去っていった。
部屋には静寂が訪れる。私はまた天井との睨めっこを再開する。
その時、本当に不意にジューゴの顔が思い浮かんだ。
私のせいで大けがを負い、地下牢で眠っているジューゴ。許されなくていいから会って一言謝りたかったけど、今のままではそれも叶わなかった。
頬を一筋涙が滑り落ちる。私は頭が痛くなるまで、ずっとそうして泣いていた。
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キメラ(プロフ) - きえさん» コメントありがとうございます！ その言葉が何よりの励みになります😭しばらくはゆっくりの更新になってしまうのですが、見守っていただければ嬉しいです！ (3月28日 23時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
きえ(プロフ) - 話の設定が最高で続きが待ち遠しいです！！主人公がこれからどうなってくるのか考えるだけでワクワクしてます！！これからも頑張ってください！ (3月28日 20時) (レス) @page37 id: 3e2dfb3761 (このIDを非表示/違反報告)
キメラ(プロフ) - よいよいの宵さんさん» コメントありがとうございます！展開楽しんでいただけるようでとても嬉しいです😭どうぞお付き合いいただけたらと思います🫶 (12月2日 21時) (レス) id: ac6bc7be2b (このIDを非表示/違反報告)
よいよいの宵さん(プロフ) - 久々にナンバカが見たくなり探したところ主様の作品を見つけました。とても面白く、夢主ちゃんの秘密が徐々に明かされていくのがとてもドキドキします。これからも頑張ってください！ (12月2日 20時) (レス) id: ab89395776 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月14日 21時
