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Word.0058 虚脱 ページ8

翌日。

ベッドに横たわった私は、ぼうっと天井を眺めていた。そうすることしか許されなかった。

なぜなら私の全身はがっちりとベッドに拘束されていたから。


恐らく自死を防止するための措置なのだろう。舌を噛み切らないように、あとは能力を行使されることを考慮して、口枷もはめられるほどの徹底ぶり。

寝返りも許されず、かろうじて手首が動くだけの自由。一応、右手側に紙とペンは用意されているが、体勢的にそれで暇を潰すこともできない。

時間の経過が曖昧になっていく感覚というのは、正直気が狂いそうで、死ぬ気も失せていた。


──みんなはきっと、私のことを気味悪がっていた。

言ったことが本当になる能力。加えて昨日の錯乱。どうしたって、今までと同じ目で私のことを見てはくれないだろう。

何も考えたくなくて、できるだけ頭を真っ白にして過ごそうとしたけれど、そうすると否が応でも過去の記憶が蘇ってくる。耐えきれなくなって何度か叫んでみたりしたけれど、誰かがやってくることはなかった。


また記憶を消してくれないだろうか。でもこんな風に記憶が戻ったんだから、きっと付け焼刃にしかならない。

一番いいのは死刑を宣告されることだ。それはきっと、どんな天使のささやきより甘美な響きであるのだろう。


と、ドアが開錠される音がした。そちらの方に首を巡らせることもできない。

誰かが入ってくる……それはトレーを持った神八だった。


「お食事をお持ちいたしまシタ」


神八はトレーをいったん脇に置き、ベッドを操作する。リクライニングが稼働して、私の上体が強制的に起こされた。

オムレツとサラダ、そしてフルーツというシンプルなメニュー。今は朝みたいだった。


「ドウゾ」


神八は私の口枷を外した後、スプーンでオムレツをすくって、目の前に差し出してくる。だけど私は唇を引き結び、顔を背けた。とてもじゃないが食べる気になんてなれない。


「お召し上がりになってくだサイ。5108番サンの身体には、軽度の栄養欠乏が見られマス」


栄養が足りていないからなんだというのだろう。

だけど神八の意志は固かった。黄色の瞳で真っすぐこちらを見つめてくる。私は結局根負けして、食事を口に含んだ。味はしなかった。


これから自分がどうなるか、どうするべきかなんていうことは、ちっとも考えられなかった。

こんな状態がずっと続くなら、やっぱり命を断ち切ってしまった方がいい。そういう結論に落ち着くのだった。

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キメラ(プロフ) - きえさん» コメントありがとうございます! その言葉が何よりの励みになります😭しばらくはゆっくりの更新になってしまうのですが、見守っていただければ嬉しいです! (3月28日 23時) (レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
きえ(プロフ) - 話の設定が最高で続きが待ち遠しいです!!主人公がこれからどうなってくるのか考えるだけでワクワクしてます!!これからも頑張ってください! (3月28日 20時) (レス) @page37 id: 3e2dfb3761 (このIDを非表示/違反報告)
キメラ(プロフ) - よいよいの宵さんさん» コメントありがとうございます!展開楽しんでいただけるようでとても嬉しいです😭どうぞお付き合いいただけたらと思います🫶 (12月2日 21時) (レス) id: ac6bc7be2b (このIDを非表示/違反報告)
よいよいの宵さん(プロフ) - 久々にナンバカが見たくなり探したところ主様の作品を見つけました。とても面白く、夢主ちゃんの秘密が徐々に明かされていくのがとてもドキドキします。これからも頑張ってください! (12月2日 20時) (レス) id: ab89395776 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:キメラ | 作成日時:2023年11月14日 21時

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