詩篇18 せいさい ページ43
「あーあ、美穂のことガチギレさせてやんの。かわいそ〜、明日から知らないよ？」
「もうちょっとマシな態度取ってたら、ゆるしてくれてたかもしれないのにねえ」
クラスメイトたちは単に、私の感情的な失言を面白がっている。
違う、違うのだ。みんなが思っているほど、これは単純な問題ではない。
彼女たちは美穂ちゃんを先頭に、くすくすと笑いながら立ち去ろうとする。
我に返った私は駆け出し、美穂ちゃんの背中に追いすがった。
「ごめんなさい、ごめんなさい！ 待って美穂ちゃん、ちがうの！！」
たちまち、端正な顔が歪められる。そうして強い勢いで私の身体を突き飛ばした。
「は？ なんなの、うっとうしいんだけど！」
固い廊下に尻餅をつき、尾てい骨から背中にかけて鈍い衝撃が走る。
それでも私は立ち上がった。もう友達でいてくれなくてもいい。私が犠牲になったとしても、美穂ちゃんの盾とならなければいけない。
しかし。
死神の鎌は無情にも、すぐに振り下ろされた。
それ以降の光景は、私の目には細切れのスローモーションのように映った。
まず、右手にある階段から、帽子をかぶった中年の男性が飛び出してきた。
全員の視線がそちらに向く。生徒でも教師でもないその姿に、クラスメイトたちがそろって首を傾げた次の瞬間。
その男性の手元が、夕日の反射を受けて閃いた。
それが美穂ちゃんの胸部に深々とめり込んだのを見てから、私は男性が持っていたものが包丁なのだと気が付いた。
ドラマだとこういう時、「グサッ」と音が鳴る。だけど現実では何の音もしなかった。
美穂ちゃんは無表情のまま──多分、事態を理解する暇すら与えられなかった──その場に倒れて動かなくなった。赤黒い液体が、意志を持った生き物のようにそこから広がっていった。
何が起こったかを把握したクラスメイトたちが、悲鳴を上げて散り散りに逃げていく。
男性はその場に立ったまま、美穂ちゃんの身体を見下ろしていた。
私は立っていられなくなって、その場にへたり込む。あまりのショックに涙を流すことすらできなかった。
心の中の思いが、そのまま言葉となって口から漏れる。
「どうして」
神様。
どうして私の言葉は、運命を捻じ曲げるようにできているの？
教師や警察たちが来て場を抑えるまで、私たちはひとつも身じろぎをせず、その場に留まっていた。
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キメラ(プロフ) - きえさん» コメントありがとうございます！ その言葉が何よりの励みになります😭しばらくはゆっくりの更新になってしまうのですが、見守っていただければ嬉しいです！ (3月28日 23時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
きえ(プロフ) - 話の設定が最高で続きが待ち遠しいです！！主人公がこれからどうなってくるのか考えるだけでワクワクしてます！！これからも頑張ってください！ (3月28日 20時) (レス) @page37 id: 3e2dfb3761 (このIDを非表示/違反報告)
キメラ(プロフ) - よいよいの宵さんさん» コメントありがとうございます！展開楽しんでいただけるようでとても嬉しいです😭どうぞお付き合いいただけたらと思います🫶 (12月2日 21時) (レス) id: ac6bc7be2b (このIDを非表示/違反報告)
よいよいの宵さん(プロフ) - 久々にナンバカが見たくなり探したところ主様の作品を見つけました。とても面白く、夢主ちゃんの秘密が徐々に明かされていくのがとてもドキドキします。これからも頑張ってください！ (12月2日 20時) (レス) id: ab89395776 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月14日 21時
