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詩篇17 しつげん ページ42

「ひ、どい」

「ひどい? むしろ感謝するべきなんだけど。私がいなかったらあんたぼっちだったくせに。私らと友達できて楽しかったんでしょ?」


一生分の罵倒をいっぺんに受けた心地だった。

冷酷な美穂ちゃんの顔を見たくなくて俯く。視界には廊下の床と、上履きを履いた自分の足しか映らない。


「気をつかえないっていうか、人の気持ちを察せないのってどうなの? 自分がおかしいって自覚してエンリョするとか、そういうこと一切しなかったよね」


黒々とした感情が胸の底から湧いてくる。それは自分の意思とは関係なく、みるみる肥大していく。


「そのくせ成績だけバカみたいにいいのがムカつく。あんたがいなかったら私が学年一位なのに」


どうして屈託のない笑顔の裏で、平気で他人を騙せるのだろう。


「まあそういうわけだからさ、明日から私に一位とらせて? 友達なんだから頼みきいてくれるよね?」


人を見下して蹴落として貶めても、何も感じない。

そんな人間なんか。


「……なんか──……」

「え? なに、聞こえないんだけど。文句あるならもっとはっきり──」

「《美穂ちゃんなんか死んじゃえ》!!」


刹那。

世界に亀裂が入った。それは錯覚でもなんでもなくて、それまで正常に回っていた歯車が狂う音がした。

絶叫の余韻が廊下に反響して消えてから──私は自分が何をしてしまったかに気がついた。


全身から汗が吹き出てくる。

言葉は刃というたとえがある。ただ私の場合は比喩ではなく──現実となって牙を剥く。

汗と同じで、一度出たら引っ込められない。ビデオのように巻き戻すこともできない。

絶対ぜったい、天地がひっくりかえっても……この言葉だけは口にしてはいけなかったのに。


「待っ……ちが、」

「ふーん」


私の発した否定の言葉に被せるようにして、美穂ちゃんは短く相槌を打つ。


「せっかくこれからも友達でいてあげようと思ったのに。そういうこと言うなら仕方ないね」


凄みのある微笑みを見ても、今ばかりは何も怖くなかった。自分がしてしまったことに比べれば。

私はいま一瞬でも、美穂ちゃんの死を心から願い、言葉として発してしまった。「死ね」だなんて、口にしていい言葉ではない。だけど世界の中で私だけは……絶対ぜったい、駄目だった。

彼女たちの会話を聞かずに立ち去ればよかった。自分に能力があると判明した時点で声帯を切り取ればよかった。しても栓のない後悔が頭を巡る。

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キメラ(プロフ) - きえさん» コメントありがとうございます! その言葉が何よりの励みになります😭しばらくはゆっくりの更新になってしまうのですが、見守っていただければ嬉しいです! (3月28日 23時) (レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
きえ(プロフ) - 話の設定が最高で続きが待ち遠しいです!!主人公がこれからどうなってくるのか考えるだけでワクワクしてます!!これからも頑張ってください! (3月28日 20時) (レス) @page37 id: 3e2dfb3761 (このIDを非表示/違反報告)
キメラ(プロフ) - よいよいの宵さんさん» コメントありがとうございます!展開楽しんでいただけるようでとても嬉しいです😭どうぞお付き合いいただけたらと思います🫶 (12月2日 21時) (レス) id: ac6bc7be2b (このIDを非表示/違反報告)
よいよいの宵さん(プロフ) - 久々にナンバカが見たくなり探したところ主様の作品を見つけました。とても面白く、夢主ちゃんの秘密が徐々に明かされていくのがとてもドキドキします。これからも頑張ってください! (12月2日 20時) (レス) id: ab89395776 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:キメラ | 作成日時:2023年11月14日 21時

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