詩篇16 うらはら ページ41
「Aちゃん! もしかして、私たちのこと待っててくれた?」
ただ一人、美穂ちゃんだけは。いつもと全く同じ笑顔で、明るい声色で私にそう声をかけてきた。
全身が総毛立って、思わず一歩あとずさる。人間に対してこれほど恐怖の感情を抱いたのは生まれて初めてだった。
──どうして、あれほど心無い言葉を吐き散らした後に、こんな純真な表情ができるのだろう。
「わ、わた、私……みんなに、うっとうしいって、思われてたの?」
それでも私は、一縷の希望を求めてそう口にしてしまった。
どうか否定してほしい。さっきの会話は何かの間違いだったと言ってほしい。お願いだから。
美穂ちゃんはきょとんとした表情を浮かべ、宙に視線を彷徨わせる。
そうして私のことを真正面から見つめて、
「──逆にそう思われてる自覚なかったの?」
色のない声でそう告げてくる。
別人であってほしいなんて過ぎた願望だった。今までのが偽りで、これが本当の美穂ちゃんなのだ。
「え? どんだけ鈍感なの。髪の毛ババアみたいに白くて、コミュ力ない上に
今の会話を聞かれた以上、偽る必要はないと思ったのか。それとも遅かれ早かれ本性を表すつもりだったのか。
口元に嘲笑を浮かべて、目に蔑みの色をあらわにして。それは間違っても、友達に対する態度ではなかった。
「ちょっと美穂言い過ぎだって〜! まあ全部ホントのことなんだけど」
「ずっとこいつの面倒みてガマンの限界きたってかんじ?」
周囲の友人も場をはやしたてる。
私と彼女たちの間に見えない線が引かれてる気がした。それは決して超えることの許されない境界に思えた。
それでも私は手を伸ばそうとする。目の前の現実を認めてしまったらその瞬間、世界が終わってしまうから。
「でっ、も……そんな、先生に気に入られるためだけに、私と仲良く、だなんて」
「私は要領いいから、そういうこともできるの。きつかったけどねー、好きでもない相手にニコニコ笑って接するの」
だけど私の信じていた世界は、一番大好きな相手によって、木っ端微塵に砕かれていく。
なんて酷い仕打ちなのだろう。私は何か、悪いことをしてしまっていたのだろうか。
彼女達の姿が遠のいて、ぐにゃりと輪郭が揺らいでいく。。半ば貧血のようになりながらも、私はどうにか二本の足で立ったまま、わなわなと震える唇で抗議する。
33人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
キメラ(プロフ) - きえさん» コメントありがとうございます! その言葉が何よりの励みになります😭しばらくはゆっくりの更新になってしまうのですが、見守っていただければ嬉しいです! (3月28日 23時) (レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
きえ(プロフ) - 話の設定が最高で続きが待ち遠しいです!!主人公がこれからどうなってくるのか考えるだけでワクワクしてます!!これからも頑張ってください! (3月28日 20時) (レス) @page37 id: 3e2dfb3761 (このIDを非表示/違反報告)
キメラ(プロフ) - よいよいの宵さんさん» コメントありがとうございます!展開楽しんでいただけるようでとても嬉しいです😭どうぞお付き合いいただけたらと思います🫶 (12月2日 21時) (レス) id: ac6bc7be2b (このIDを非表示/違反報告)
よいよいの宵さん(プロフ) - 久々にナンバカが見たくなり探したところ主様の作品を見つけました。とても面白く、夢主ちゃんの秘密が徐々に明かされていくのがとてもドキドキします。これからも頑張ってください! (12月2日 20時) (レス) id: ab89395776 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:キメラ | 作成日時:2023年11月14日 21時