Word.0055 道程 ページ5
「そういえば──」
呟いたウノは、ロックと顔を見合わせる。二人は新年大会の時に二度、その『能力』とやらが発現するのを見ていた。
一度目は独楽回しの時。ハジメが投げた独楽の先にコトハがいた。コトハが「《来ないで》」と叫ぶと、独楽は木っ端微塵に砕け散った。
二度目は鏡開きの時。我を失ったジューゴがこちらに刀を振り下ろそうとした瞬間、「《やめて、ジューゴ》」というコトハの絶叫が響いた。一瞬の後にハジメがジューゴを拳で制裁した。
全て偶然、タイミングの問題と言ってしまえばそれまでだ。しかし翁の話を聞いた後では、そう切り捨てられなくなる。
「それではまるで、言霊……」
犬士郎の思わず漏らした問いに「ああ、その通りだ」と頷いた翁は続ける。
「5108番の存在が極秘だっつうのは、そういうこった。その能力はあまりにも強力で危険すぎる。
極端な例だが……例えばあいつを米国首相に引き合わせて『ロシアに核戦争を仕掛けろ』と命令すれば──」
「世界大戦が起きかねない……？」
続きの言葉を引き取った犬士郎は、自分でそう言った後、背中がぞくりと粟立つのを感じた。
翁は決して冗談でこんなことを言っているわけではないだろう。自分はあの少女の力を目の当たりにしたことはないが、事実だとすれば……南波は相当危険な存在を内包していることになる。
「じゃあ、コトハちゃんが今までスケッチブックでお話してたのも……？」
「ああ、そうか。今のうちにあいつの過去についても話しておかないとな」
翁は頭の中から少女の情報を引っ張り出して、四人に語った。
コトハの初犯は十四歳、罪状は私有地への不法侵入。この時点で彼女は天涯孤独の身で、父親は他界、母親は蒸発していた。
未成年ということ、後見人がいないということ──そしてなにより本人が自失状態であることが加味され、逮捕ではなく保護という対処が取られた。精神病棟に入れられた少女だったが、しかし数日のうちに脱走。
警察が行方を掴めたのはおよそ半年後のことだった。どうやらギャングに誘拐され、『力』を無理やりに行使させられていたらしい。
ここで初めて少女の持つ力に気が付いた警察側は事態の重さを知り、ギャングにて犯罪に加担していた──させられていた──少女を逮捕。囚人として過ごさせた方が本人を、そして世界を守れるという上層部の人間の判断だった。
そしてその身柄が、南波女子刑務所に送られた。
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キメラ(プロフ) - きえさん» コメントありがとうございます！ その言葉が何よりの励みになります😭しばらくはゆっくりの更新になってしまうのですが、見守っていただければ嬉しいです！ (3月28日 23時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
きえ(プロフ) - 話の設定が最高で続きが待ち遠しいです！！主人公がこれからどうなってくるのか考えるだけでワクワクしてます！！これからも頑張ってください！ (3月28日 20時) (レス) @page37 id: 3e2dfb3761 (このIDを非表示/違反報告)
キメラ(プロフ) - よいよいの宵さんさん» コメントありがとうございます！展開楽しんでいただけるようでとても嬉しいです😭どうぞお付き合いいただけたらと思います🫶 (12月2日 21時) (レス) id: ac6bc7be2b (このIDを非表示/違反報告)
よいよいの宵さん(プロフ) - 久々にナンバカが見たくなり探したところ主様の作品を見つけました。とても面白く、夢主ちゃんの秘密が徐々に明かされていくのがとてもドキドキします。これからも頑張ってください！ (12月2日 20時) (レス) id: ab89395776 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月14日 21時
