詩篇15 うらぎり ページ40
「でもそろそろあいつの相手するのもしんどくなってきた。さいしょに声かけたときは髪白いだけの陰キャだと思ってたけど、じっさいはコレだよ、コレ」
美穂ちゃんが「コレ」といって、何を示したのかはわからない。私を侮辱するジェスチャーをしたのかもしれない。
「あーわかる！ とろいし、なんていうか空気読むのヘタクソ。あと本読みすぎててキモイ」
「それな？ でも話しかけたりしたらめちゃくちゃべったりついてくるの、うっとしい」
私の足はその場に縫い付けられたように動かなくなっていた。
この会話は聞くべきではない。今すぐ立ち去るべきだ。頭ではわかっているのに身体がついていかない。
「きわめつけなのがさ、去年かな？ あいつが一週間くらい不登校になった時に、あたし担任にたのまれて家まで行ったんだけど。そん時になんて言われたと思う？ 自分の口に出したことが本当になるんだけどどうしたらいいか、って」
はちきれるような大爆笑が起こる。
私はショックのあまりたたらを踏んだ。信じていたものが音を立てて崩れ去っていく。
能力のことは誰にも言わないと、指切りを交わしたのに──その約束はあっさりと破られたのだ。
教室にいるのは、美穂ちゃんの声をした別人であってほしい。そう切に願った。
「なにそれ本格的にヤバいって！ 不思議ちゃんですませられるレベルじゃないから！」
「本の読みすぎで現実の区別つかなくなってるんじゃないの？」
いくつもの甲高い笑い声が、私の思考をぐちゃぐちゃにかき混ぜる。
美穂ちゃんが今まで私に良くしてくれていたのは、善意なんかではなくて。
自分の株を上げるため。「いい子」である自分に酔いしれるため。
みんなも同じだ。本気で美穂ちゃんと同じ考えを持っているのか、ただ金魚の糞よろしく媚びへつらっているのかはわからないけれど。
悪意を底に孕みながら人に優しくできるのが信じられない。
前も後ろも定かでなくなり、自分がちゃんと立っていられているのかもわからなくなった。
だからランドセルを背負った美穂ちゃんたちが教室から出てくるのにも、全く気付けなかった。
「あっ」
女の子のうちの誰かが、私の姿に気づいて声を漏らす。
他の子たちも、しまった、というような顔をした。まさか今の会話を本人に聞かれているとは思わなかったのだろう。
夢であってほしい。ひたすらそう願っていた。この場所から、みんなの視線から逃げ出したかった。
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キメラ(プロフ) - きえさん» コメントありがとうございます！ その言葉が何よりの励みになります😭しばらくはゆっくりの更新になってしまうのですが、見守っていただければ嬉しいです！ (3月28日 23時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
きえ(プロフ) - 話の設定が最高で続きが待ち遠しいです！！主人公がこれからどうなってくるのか考えるだけでワクワクしてます！！これからも頑張ってください！ (3月28日 20時) (レス) @page37 id: 3e2dfb3761 (このIDを非表示/違反報告)
キメラ(プロフ) - よいよいの宵さんさん» コメントありがとうございます！展開楽しんでいただけるようでとても嬉しいです😭どうぞお付き合いいただけたらと思います🫶 (12月2日 21時) (レス) id: ac6bc7be2b (このIDを非表示/違反報告)
よいよいの宵さん(プロフ) - 久々にナンバカが見たくなり探したところ主様の作品を見つけました。とても面白く、夢主ちゃんの秘密が徐々に明かされていくのがとてもドキドキします。これからも頑張ってください！ (12月2日 20時) (レス) id: ab89395776 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月14日 21時
