詩篇11 ぜつぼう ページ36
人を殺す。世界を変える。
そんなの、アニメの中の話だと思っていた。だから言葉の意味は分かっていても、実態が伴っていなかった。
だけどさっきの状況を体験した今では、はっきりとわかった。私の言葉一つで、他人の未来が、運命が捻じ曲げられる。
言霊の力が持つ恐ろしさ。それを理解した瞬間、私は立っていられなくなってその場にへたり込んだ。
「おかあ、さん」
──私はこれから、どうやって生きていけばいい？
そう口に出したとしても、答えを導ける人は世界に誰もいない。
どうして私なのだろう。神様はどうして、私にこんな罪な力を与えたのだろう。
この業は、咎は──私が背負うにはあまりにも重すぎる代物だった。
母は目に涙を浮かべて私を抱きしめた。私は母の身体にむしゃぶりつくようにして、わんわん声を上げて泣いた。
路地の細く切り取られた空の下で、二人はしばらくそうやって抱き合っていた。
＊
私はそれからショックで家に引きこもった。
食事もろくに摂らず、本も読まず、日がな一日布団の中で過ごした。学校で能力を使ってしまうことがあれば、多くの人を傷つけてしまう……そう考えると怖くて体が竦んだ。
母は学校に行くよう促してこなかった。ともすれば私がこのままずっと引きこもることを願ってすらいたかもしれない。
そんな廃人になったような私を救ってくれたのは美穂ちゃんだった。
学校を一週間以上も欠席する私を心配して、訪ねてきてくれたのだ。
追い返すのも忍びなく、私は美穂ちゃんを家に上げた。母はまだ仕事から帰ってきていなかった。
「ちゃんとごはん食べてる？ 顔が真っしろだよ、Aちゃん」
本当に心配してくれているのがわかったけど、私は無言で俯くしかなかった。
大好きな美穂ちゃんだけは絶対に傷つけたくない。だけどその優しさに甘えてしまいたいという思いもある。
「ほら、これ、宿題のプリントとか学級つうしん……Aちゃんが休んでたじゅぎょうの分、私が教えるよ」
袋に入ったプリントの束が差し出される。
そこに綴られた文字すら、読む気にはなれなかった。目の前の言葉が、ただの黒い羅列にしか感じられなくて──
……言葉？
身体に電流が駆け巡ったような衝撃があった。
──なぜ今まで気付かなかったのだろう。コミュニケーションを図れるのは声だけじゃない。文字にしたら、能力は発現せずに済むのではないか。
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キメラ(プロフ) - きえさん» コメントありがとうございます！ その言葉が何よりの励みになります😭しばらくはゆっくりの更新になってしまうのですが、見守っていただければ嬉しいです！ (3月28日 23時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
きえ(プロフ) - 話の設定が最高で続きが待ち遠しいです！！主人公がこれからどうなってくるのか考えるだけでワクワクしてます！！これからも頑張ってください！ (3月28日 20時) (レス) @page37 id: 3e2dfb3761 (このIDを非表示/違反報告)
キメラ(プロフ) - よいよいの宵さんさん» コメントありがとうございます！展開楽しんでいただけるようでとても嬉しいです😭どうぞお付き合いいただけたらと思います🫶 (12月2日 21時) (レス) id: ac6bc7be2b (このIDを非表示/違反報告)
よいよいの宵さん(プロフ) - 久々にナンバカが見たくなり探したところ主様の作品を見つけました。とても面白く、夢主ちゃんの秘密が徐々に明かされていくのがとてもドキドキします。これからも頑張ってください！ (12月2日 20時) (レス) id: ab89395776 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月14日 21時
