詩篇08 たのしさ ページ33
私は本を手にしたまま、目をしばたたかせる。
仲良くしよう──そんなこと言われたのは初めてだったから、どうすればいいのかわからなかったのだ。
私なんかに話しかけてくれる子がいるなんて。嬉しさと戸惑いが同じくらいの割合で、胸の中に同居しだす。
「Aちゃんすっごい頭いいって学年中でひょうばんだったよ！ もしよかったら、こんど勉強おしえてほしいな」
決して押しつけがましくない、柔らかな言葉。するりと相手の懐に入り込めるような話し方だった。
私の緊張も自然と解される。本を閉じて、控えめに頷いた。
「う、うん。私なんかでよかったら」
「やった、ありがとう！ これからよろしくね」
手を差し出され、私たちは握手を交わす。
美穂ちゃんの手は柔らかくてとても温かかった。
＊
美穂ちゃんはクラスの、いや学年の人気者だった。
勉強も運動もできて、誰にでも分け隔てなく──それこそ根暗な私にも明るく接してくれる。クラスメイトはもちろん、先生からの人望も厚い。
家はこの街一番のお金持ちらしいが、それを鼻にかけることは全くなく、さっぱりとした気持ちのいい性格をしている。
私は美穂ちゃんのおかげでごくごく自然に、友達の輪に加わることができた。
休み時間は校庭で遊んだ。美穂ちゃんは運動の下手な私を責めず、優しくフォローしてくれた。
おすすめの文具を教えてもらい、プロフィール帳やシールを交換し、一緒に宿題をした。
美穂ちゃんだけでなく、他の女の子も優しくしてくれた。今までは私が自分で壁を作ってしまっていたのだと思った。日常に鮮やかな色が付けられた気分だった。
私は嬉しくなって舞い上がり、母に嬉々として報告した。
──初めて友達ができた。可愛くて気立てが良くて、みんなから人気がある。その子のおかげで毎日が楽しくなった。
しかし娘の言葉を聞いた母は、にこりともせずにこう言った。
「友達と遊ぶときは十分気を付けるのよ。口を開くなとまでは言わないけれど、場の中心で喋るようなことはないようにした方がいいわ。もし能力のことが知られたら、学校で居場所がなくなるかもしれないから」
能力という単語を聞いた瞬間、私のうきうきとした気持ちは急速にしぼんでいった。
私の中には今も異能力があるのだから、心からみんなと対等に接することはできないのだ……そう思い知らされた。
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キメラ(プロフ) - きえさん» コメントありがとうございます！ その言葉が何よりの励みになります😭しばらくはゆっくりの更新になってしまうのですが、見守っていただければ嬉しいです！ (3月28日 23時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
きえ(プロフ) - 話の設定が最高で続きが待ち遠しいです！！主人公がこれからどうなってくるのか考えるだけでワクワクしてます！！これからも頑張ってください！ (3月28日 20時) (レス) @page37 id: 3e2dfb3761 (このIDを非表示/違反報告)
キメラ(プロフ) - よいよいの宵さんさん» コメントありがとうございます！展開楽しんでいただけるようでとても嬉しいです😭どうぞお付き合いいただけたらと思います🫶 (12月2日 21時) (レス) id: ac6bc7be2b (このIDを非表示/違反報告)
よいよいの宵さん(プロフ) - 久々にナンバカが見たくなり探したところ主様の作品を見つけました。とても面白く、夢主ちゃんの秘密が徐々に明かされていくのがとてもドキドキします。これからも頑張ってください！ (12月2日 20時) (レス) id: ab89395776 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月14日 21時
