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Word.0073 選択 ページ23

大和の怪力っぷりは、日々の中で嫌というほど見せられている。女子一人を拘束するなど赤子の手をひねるより容易い。なのに私の単独行動を許してしまったというのは……ただのミスと片付けるにしては不可解だ。


「星太郎、他にこいつが能力を発現させたと思われる場面は」


呼ばれた星太郎は「はいっ」と返事をし、しばらく目線を宙に漂わせてから言葉を紡いだ。


「えっと、第四種目でしょうか。5108番さんは迫りくる独楽に対して『来ないで』と叫んでいたと思います。その瞬間、主任の投げた独楽が粉々になった……あれはちょっとやそっとで壊れるものではないです。その……主任が、とんでもない怪力で独楽を持つ手に力を入れていなければ」


言ってから星太郎は最後のが失言だと気づいたのか、おろおろとしたけれど、ハジメがそれに対して叱責することはなかった。

ハジメは自分の考えはともかくとして、私の能力の存在を認めることにしたようだ。そうしないことには話が始まらないというのもあるだろう。


「記憶が戻り、能力の存在が再び明らかになった以上、俺たちもお前の処遇について検討する必要がある。だがその前に……お前自身はどうなんだ」


ハジメはファイルを机の上に置く。どさっ、と重みのある音がした。その中の資料にはきっと、私の人生の一部が、文字として──言葉として記されている。


「自分の能力が及ぼす影響に怯えて、一生を隠れて過ごすか……それとも自分の能力を認めて、泥臭くても這い上がって折り合いをつけるのか」


ハジメの、ダークレッドの双眸が射抜いてくる。

私はその瞬間、痛いほど思い知らされた──自分が今、己の人生の手綱を握っているのだということに。

囚人という立場だとしても、生きている以上、私の未来に責任を持つのは私。


──みんなの隣に、胸を張って立てるようになりたい。

その思いが、何よりも強く私を突き動かした。


私は傍に置いていたスケッチブックとペンを乱暴な動作で手に取る。急ぎすぎて右手からペンが零れ落ちた。星太郎がそれを手に取ろうとするより早く拾い上げ、まっさらなページに自分の気持ちを綴る。


『私は自分のことに責任を持つべき。過去に犯した罪を償うのもそうだし、これから先同じことを二度としないためにも。だから能力のことを明らかにして、全部と向き合う。そのための覚悟はもうできている』

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キメラ(プロフ) - きえさん» コメントありがとうございます! その言葉が何よりの励みになります😭しばらくはゆっくりの更新になってしまうのですが、見守っていただければ嬉しいです! (3月28日 23時) (レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
きえ(プロフ) - 話の設定が最高で続きが待ち遠しいです!!主人公がこれからどうなってくるのか考えるだけでワクワクしてます!!これからも頑張ってください! (3月28日 20時) (レス) @page37 id: 3e2dfb3761 (このIDを非表示/違反報告)
キメラ(プロフ) - よいよいの宵さんさん» コメントありがとうございます!展開楽しんでいただけるようでとても嬉しいです😭どうぞお付き合いいただけたらと思います🫶 (12月2日 21時) (レス) id: ac6bc7be2b (このIDを非表示/違反報告)
よいよいの宵さん(プロフ) - 久々にナンバカが見たくなり探したところ主様の作品を見つけました。とても面白く、夢主ちゃんの秘密が徐々に明かされていくのがとてもドキドキします。これからも頑張ってください! (12月2日 20時) (レス) id: ab89395776 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:キメラ | 作成日時:2023年11月14日 21時

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