Word.0066 温情 ページ16
後に続く言葉が思いつかなかった。遠慮と気恥ずかしさがないまぜになって、思考がまとまらなくなる。
そんな私に対して、みんなは。
「焦らなくていいぜ。俺らにできることあったら協力するからな」
「うん！ 声でもスケッチブックでも、僕らはコトハちゃんとお話できたらそれが一番嬉しいよ！」
そう返してくれた。
私にとってそれは、何よりも温かく、優しい救いとなった。私は私だと肯定してくれるたった一言が、こんなにも胸を温かくしてくれる。
「ま、そういうこった。時間はあるんだし、ゆっくりやっていこうぜ」
そう言ったウノの眩しい笑顔を見た私は、屋内にいるのに陽だまりの中に身を横たえたような安堵感を覚えた。
私はみんなに何かを貰ってばかりだ。それなのに私は何も返すことができていない。生きることから目を背け、殻に閉じこもってばかりいた。
逃げてばっかりで、隠してばっかりでごめんなさい。
いや……今言うべきなのは「ごめん」じゃない。
勢いよく顔を上げる。
これだけは、この気持ちだけは声に出して伝えなければいけないと思った。
「──ありがとう」
今の私は多分、上手く笑えてる。
だってみんなが、とっても嬉しそうな表情で私のことを見てくれているから。
＊
明けて、翌日。
いつも通りの日常だった。ニコはテレビでアニメを見ていて、ロックとウノは雑誌を、私は図書館で借りた本を読んでいる。
みんなの表情はどこか退屈そうだった。ジューゴがいなくて、脱獄ができないからだろう。
そのストレスが、偶然房の前を通りかかった星太郎に向いたりもした。イケメン死ね！ と罵られ、涙目になって逃げる星太郎。可哀想だ。
ジューゴはいつ戻ってこれるのだろう。誰にともなくそう尋ねたかったけど、雰囲気が沈痛になったら気まずいと思って遠慮した。
と、そんな時。房の扉が開錠される音がする。
ぎょっとして振り向くと、そこにはハジメが立っていた。
「あー！ ハジメちゃん久しぶり！」
「謹慎お疲れ〜」
ロックとニコは明るく声をかけたが、ウノは対照的に「なんか用かよ」と呟いただけだった。
新年大会でジューゴが捕縛された一幕が蘇り、私は反射的に身構えたが、ハジメの様子はいつも通りに見える。
どうりで今日は代理の主任がいないわけだ。ハジメが謹慎を言い渡されて──そしてそれは私が目覚めた日と同じだった──三日が経ったのだ。
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キメラ(プロフ) - きえさん» コメントありがとうございます！ その言葉が何よりの励みになります😭しばらくはゆっくりの更新になってしまうのですが、見守っていただければ嬉しいです！ (3月28日 23時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
きえ(プロフ) - 話の設定が最高で続きが待ち遠しいです！！主人公がこれからどうなってくるのか考えるだけでワクワクしてます！！これからも頑張ってください！ (3月28日 20時) (レス) @page37 id: 3e2dfb3761 (このIDを非表示/違反報告)
キメラ(プロフ) - よいよいの宵さんさん» コメントありがとうございます！展開楽しんでいただけるようでとても嬉しいです😭どうぞお付き合いいただけたらと思います🫶 (12月2日 21時) (レス) id: ac6bc7be2b (このIDを非表示/違反報告)
よいよいの宵さん(プロフ) - 久々にナンバカが見たくなり探したところ主様の作品を見つけました。とても面白く、夢主ちゃんの秘密が徐々に明かされていくのがとてもドキドキします。これからも頑張ってください！ (12月2日 20時) (レス) id: ab89395776 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月14日 21時
