Word.0065 決意 ページ15
三人は顔を見合わせた。私は自然と、サインペンを握る手に力を込める。
やっぱりこんな奇異な能力のことを聞かされて、すんなり受け入れてくれるわけはないか……そう思ったのだが。
「あ、あのさ……言ったことが本当になるんなら、『今日の晩飯のデザートはケーキだ』つったら、それが現実になったりするのか？」
「もー、ロックってば相変わらずご飯のことばっかりだね」
「でもそれだと何を見ればいいんだろうな？ シロになんのか？」
みんなは、そう賑やかに話している。
ポカンとなっていた私は、肩から力を抜いた。
いつもの、ちょっと騒がしいくらいの雰囲気が、私のことをあたたかく包み込んでくれているのがわかる。
十三房に収容されてよかったと、十三房に収容されているのがみんなでよかったと思えたのだった。
その時ふとニコが表情を翳らせて、呟くように言う。
「ハジメちゃんは、コトハちゃんの力のこと知ってたんだよね……」
いかついゴリラみたいな顔面が脳裏に蘇る。
私の過去について何度尋ねても、頑なに答えてくれなかった。それは私の記憶が戻るのを避けてのことだったのだろう。願わくばずっと、私が自分を取り戻さないまま時を経てくれればいいと感じていたかもしれない。
『知ってて隠してたんだと思う。私のことが外に漏れたら、きっと大騒ぎになるから』
「看守って奴は結局、自分らの損得しか考えてねえんだよ。そんで目的のためなら何してもいいって思ってやがる」
ウノのその口調には棘があった。ロックとニコは顔を見合せて肩を竦めている。
確かにハジメのあの行動は明らかにやり過ぎだ。よく数日の謹慎で済んでいるものだと思う。
ジューゴは今、別の場所に隔離されているのだろう。私は……これからどうなるだろう。能力の解析だけじゃなくて、もっと踏み込んだ処遇が下されるかもしれない。
不用意に能力を発現させないようにするという見方では、私は声を出すべきではないのだろう。そもそも声帯を切り取った方がいいのではないかと思わなくもない。
だけど。できるなら、できるところまで抗いたいから。
「あの、あの、ね」
六つの瞳がこちらに向けられ、私は反射的に俯いた。みんなの顔を見て話せるようになるには、まだ時間が必要みたいだった。
「これ、から。ちょっとずつ、自分の声で、は、なせるように頑張る……から……」
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キメラ(プロフ) - きえさん» コメントありがとうございます！ その言葉が何よりの励みになります😭しばらくはゆっくりの更新になってしまうのですが、見守っていただければ嬉しいです！ (3月28日 23時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
きえ(プロフ) - 話の設定が最高で続きが待ち遠しいです！！主人公がこれからどうなってくるのか考えるだけでワクワクしてます！！これからも頑張ってください！ (3月28日 20時) (レス) @page37 id: 3e2dfb3761 (このIDを非表示/違反報告)
キメラ(プロフ) - よいよいの宵さんさん» コメントありがとうございます！展開楽しんでいただけるようでとても嬉しいです😭どうぞお付き合いいただけたらと思います🫶 (12月2日 21時) (レス) id: ac6bc7be2b (このIDを非表示/違反報告)
よいよいの宵さん(プロフ) - 久々にナンバカが見たくなり探したところ主様の作品を見つけました。とても面白く、夢主ちゃんの秘密が徐々に明かされていくのがとてもドキドキします。これからも頑張ってください！ (12月2日 20時) (レス) id: ab89395776 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月14日 21時
