Word.0064 告白 ページ14
「相手の目ぇ見て自分の思いを伝えられたっていうのは、まあお前にとっちゃ及第点だろ」
ちょっと上から目線ではあったけど、それでも私の踏み出した一歩を評価してくれているのだということはわかった。
私はメモ帳とペンを受け取り、小さく会釈する。そうしてページを開いて文字を連ね、翁さんの目の前に差し出した。
『翁さんと飾さんは私が記憶をなくしてる間も、ずっと心配してくれてたんですよね。私が問題を起こせば南波の体面に関わるからっていうのもあるだろうけど、でも二人の気持ちは伝わってました。だからありがとうございます』
こまめな検診の中でかけてくれた私に対する言葉は、形式的なものだけじゃなかった。
生きてるだけで儲けもの──その一言が、今も私の胸の中で小さな灯火となっている。
私の言葉を読んだ翁さんは笑みを漏らした。そうして肩を竦め、柔らかな声で言う。
「ったく、いっちょまえに言いやがって」
手が伸びてきて、私の頭をくしゃっと撫でる。
その時、頭の底に沈んでいた記憶のかけらが蘇ってきた。それは母が優しい手つきで、私の頭を撫でてくれている場面だった。
目に涙が滲んだのを隠すために、私は照れたふりをして俯いたのだった。
＊
みんなと一緒に房に戻った私は、ほっと肩の力を抜く。
数日戻らなかっただけなのに、ひどく久々に思えた。もうすっかり夜になってしまっていて、猿門も五舎に戻ったようだ。
私たちは自然と円座になった。
一人だけ欠けた十三房はいつもより静かだった。ジューゴは……まだ、目を覚まさないのだろうか。
星太郎に新しく持ってきてもらったスケッチブックを手に取り──私はそこで、最後に使っていたスケッチブックは、新年大会のゴタゴタで燃えてしまったのだと思い出す。
残念だけれど仕方がない。これを使って会話するのも、徐々に卒業しなければいけないのだ。
サインペン特有の匂いが鼻腔に届く。房には、私が文字を書く音だけがしていた。
『ジューゴが戻ってきたらまた改めて話すんだけど、私は自分の言ったことが現実に起こるっていう能力を持ってる。多分生まれつき』
改めて翁さんから聞かされていたのだろう、三人の表情に大きな驚愕の色は見られなかった。私は続けて記す。
『どこまで本当になるのかとか、そこまではわからない。対象の(人でも物でも)ものを見て、頭に事柄をしっかり思い浮かべて言葉を発すると、それが本当になる』
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キメラ(プロフ) - きえさん» コメントありがとうございます！ その言葉が何よりの励みになります😭しばらくはゆっくりの更新になってしまうのですが、見守っていただければ嬉しいです！ (3月28日 23時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
きえ(プロフ) - 話の設定が最高で続きが待ち遠しいです！！主人公がこれからどうなってくるのか考えるだけでワクワクしてます！！これからも頑張ってください！ (3月28日 20時) (レス) @page37 id: 3e2dfb3761 (このIDを非表示/違反報告)
キメラ(プロフ) - よいよいの宵さんさん» コメントありがとうございます！展開楽しんでいただけるようでとても嬉しいです😭どうぞお付き合いいただけたらと思います🫶 (12月2日 21時) (レス) id: ac6bc7be2b (このIDを非表示/違反報告)
よいよいの宵さん(プロフ) - 久々にナンバカが見たくなり探したところ主様の作品を見つけました。とても面白く、夢主ちゃんの秘密が徐々に明かされていくのがとてもドキドキします。これからも頑張ってください！ (12月2日 20時) (レス) id: ab89395776 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月14日 21時
