Word.0062 希望 ページ12
みんなにとって私は異物であり、異常であるはずなのに……どうして今まで通り振る舞えるのか。
わからない。私はみんなから視線を逸らすことができなくなった。
ウノは穏やかな表情で、私に語りかけてくる。
「俺らはコトハに、十三房の囚人でいてほしいって思ってる。でもこれは俺らの願望だ。無理強いはしない。どうしても辛い、一人でいたいってんなら、コトハのその気持ちを尊重する」
そうして……にやりと笑って、チャームポイントである八重歯を見せた。
「でも思うんだ。ここにいる俺ら四人が房にいて……そんで帰ってきたジューゴを一緒に迎えてやれたら、最高なんじゃねえかってな」
──陽炎のような灯火が、目の前に現れた気がした。
ゆっくりと世界に色がついていくのを、私は呆然となりながら感じていた。
いつもの十三舎十三房の風景は。
ニコがテレビでアニメを見ていて、ロックが献立表を熱心に眺めていて、ウノが昔のオンナの話をしていて、私はそれをスケッチブックとペンを片手に聞いている。
そしてジューゴがふらりと立ち上がり、房の鍵をいともたやすく開けて脱獄してしまうのだ。
いいのだろうか。
私は何人もの人たちを不幸にしてきた。そんな自分が、今までの罪や咎をいったん脇に置いて、せめてもの我儘を言っても許されるのなら。
「死にたく、ない。みんなと一緒に、もっと色んなことをしたい」
この時私は南波刑務所に来て初めて、みんなの目を見て自分の口で、思いを伝えることができた。
そうしてこれが自分の心からの願いなのだと、ようやく理解した。
「──よく言った」
ウノの手が伸びてきて、私の頭をくしゃりと撫でた。
その瞬間、自分の心を覆いつくしていた黒い霧が、一瞬にして晴れ渡った。
身も世もなく大声で泣いた。拘束されている身体では、流れる涙を拭うことすらできなかったけど、それでも構わず泣いた。
ここにいていいのだと、ここからもう一度歩き出していいのだと肯定されるのを、私はずっと待っていたのかもしれない。
みんなとの日々がいかに楽しかったかは、スケッチブックにつづられてきた会話が証明している。
まだやれていないことがたくさんある。それを放ったまま一人で閉じこもりたくなかった。みんなが伸べてくれた手に、私は必死で縋りついたのだった。
こうして私は改めて、十三舎十三房の囚人になれた。本当の意味でやり直すことを決意した。
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キメラ(プロフ) - きえさん» コメントありがとうございます！ その言葉が何よりの励みになります😭しばらくはゆっくりの更新になってしまうのですが、見守っていただければ嬉しいです！ (3月28日 23時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
きえ(プロフ) - 話の設定が最高で続きが待ち遠しいです！！主人公がこれからどうなってくるのか考えるだけでワクワクしてます！！これからも頑張ってください！ (3月28日 20時) (レス) @page37 id: 3e2dfb3761 (このIDを非表示/違反報告)
キメラ(プロフ) - よいよいの宵さんさん» コメントありがとうございます！展開楽しんでいただけるようでとても嬉しいです😭どうぞお付き合いいただけたらと思います🫶 (12月2日 21時) (レス) id: ac6bc7be2b (このIDを非表示/違反報告)
よいよいの宵さん(プロフ) - 久々にナンバカが見たくなり探したところ主様の作品を見つけました。とても面白く、夢主ちゃんの秘密が徐々に明かされていくのがとてもドキドキします。これからも頑張ってください！ (12月2日 20時) (レス) id: ab89395776 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月14日 21時
