Word.0051 懇願 ページ1
「コトハは大和と先に避難してろ！」
ウノが走りながら、私に向かってそう言った。
ジューゴを止めるつもりなのだ。だったら私も行かなきゃならない。血を流しながら暴れ続けるジューゴの姿なんて、これ以上見ていられない。
「行っては駄目だ5108番君！ 危険すぎる！」
ふらふらと歩きだそうとした私の腕を大和が掴んだ。
ゆっくりと振り向き、大和の顔を視線の中央に据える。どうすれば力を行使できるかは、手に取るようにわかっていた。
「《離して》」
そう口にすると、大和の手の力が緩んだ。
私はジューゴたちの方へ駆け出す。後ろから大和の呼び止める声がしたが、振り返らなかった。
今まで当たり前だと思っていた日常が音を立てて崩れていく。あの頃の笑い声は、戻ってこないのだろうか。
もう大切な人を失いたくない。その一心で足を動かした。
視界の端では、犬士郎と猿門とキジにムサシが取り押さえられている。煉獄の炎は、主任たちの下に封じ込められた。
ジューゴを後ろから羽交い締めにしていたロックと、その傍にいたウノは、私の姿を見て目を丸くする。
「コトハ？！ 先に逃げてろって──」
その隙を突いて、ジューゴはロックの身体を弾き飛ばす。巻き添えになったウノ共々、ロックは地面に身体を打ち付けた。
普段なら考えられないほどの怪力だ。これも枷のなせる術だというのだろうか。
私は数メートル距離を置いて、ジューゴの正面に立った。
赤い双眸がこちらを向く。そこに私は映っていない。恐怖で足が震え出すのをなんとか悟られまいとしながら、私は唇を動かした。
「みんなで十三房に戻ろう。今謝ったらきっと……ハジメとかが大事にならないように、処理してくれるはずだから」
またお散歩しよう。一緒に雑誌を読んだりしよう。いつもみたいに……。
私は私でいていいのだと教えてくれたジューゴに戻って。
「だから、お願い。本当の自分を思い出して──」
「コトハ！」
ウノに腕を引かれ、私は尻もちを着く。
──刹那、さっきまで私がいた場所を、ジューゴの刃が横切っていた。
ウノが私を庇うように抱き寄せる。
ジューゴは私たちを見下ろしながら、ゆっくりと近づいてきた。右腕が上げられる。長い刀身が赤く閃く。
「奴はどこにいる……」
うわごとのような呟き。
私はたまらず、息を大きく吸い込んだ。
「奴は──どこだあああああああ！！！」
「《やめて、ジューゴ》！！」
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キメラ(プロフ) - きえさん» コメントありがとうございます！ その言葉が何よりの励みになります😭しばらくはゆっくりの更新になってしまうのですが、見守っていただければ嬉しいです！ (3月28日 23時) (
レス) id: 6fadaab96b (このIDを非表示/違反報告)
きえ(プロフ) - 話の設定が最高で続きが待ち遠しいです！！主人公がこれからどうなってくるのか考えるだけでワクワクしてます！！これからも頑張ってください！ (3月28日 20時) (レス) @page37 id: 3e2dfb3761 (このIDを非表示/違反報告)
キメラ(プロフ) - よいよいの宵さんさん» コメントありがとうございます！展開楽しんでいただけるようでとても嬉しいです😭どうぞお付き合いいただけたらと思います🫶 (12月2日 21時) (レス) id: ac6bc7be2b (このIDを非表示/違反報告)
よいよいの宵さん(プロフ) - 久々にナンバカが見たくなり探したところ主様の作品を見つけました。とても面白く、夢主ちゃんの秘密が徐々に明かされていくのがとてもドキドキします。これからも頑張ってください！ (12月2日 20時) (レス) id: ab89395776 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年11月14日 21時
