【ナンバカ】ひとひらの言の葉 (ページ30)

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「早速今から第一種目を開始するぜぃ！参加するのは代表舎房全員だ！！」

三鶴の声を合図に、モニターにでかでかと文字が映し出された。

『第一種目書き初め』

正月ということで、それらしい種目が行われるらしい。

ウノたち海外勢は首を傾げてモニターを見つめていた。

「かきぞめ？」

『筆に墨をつけて文字を書く。日本の伝統行事』

「なんだ、それなら簡単じゃん！多少の日本語なら書けるし」

「んー……それが案外難しいんですよね、習字って」

星太郎が言うのと同時、縦に長い垂れ幕が下ろされた。

「今回のお題は『謹賀新年』！より上手く美しく芸術的に書けた舎房が勝ち抜けだ！！」

評価基準として出された文字は、プロが書いたと思われる達筆な作品。

海外組三人の顔からみるみる血の気が引いていく。しかしやるしかないと腹を決めたのか、それぞれに筆を手に取った。

──が。

「超ムズいんですけどー！」

「僕文字書けない……」

「駄目だ！俺は箸しか持てない！」

やっぱり外国の人にとって習字は難しいようで、真っすぐ線を引くのも苦労している様子だった。

半紙はぐしゃぐしゃで、墨汁はあちこちに飛び散ってしまっている。

私は自分の書いた作品を見下ろした。ギリギリ及第点というレベルだろうか、しかしこれでは評価基準に遠く及ばない。

「おおっ、すげえ！」

「コトハちゃん上手い！」

後ろからニコとロックにそう声をかけられて、私は少しだけ照れた。こんな拙い作品でも褒められたら嬉しい。

やっぱり、昔少しだけ習字道具に触れた経験が功を奏したのだろうか。

──はたと顔を上げる。昔？それはいつのことだったか。

頭痛がする。寝不足だから脳に酸素が回っていないのかもしれない。

「これならジューゴにも期待できそうだな！おい書けたか？！」

「ジューゴ君見せてー！」

私たちは半紙の前にうずくまるジューゴの方に駆け寄った。

そこにあったのは見事な……

見事な……

「ド下手かよ！！」

努力の証がなんとか垣間見える、すごく個性的な文字だった。

「そうだった……！ジューゴは脱獄以外なんの取り柄もないんだった！期待した俺がバカだった！」

「言いたい放題だなおい……俺だって真面目にやってんだよ……」

私はいたたまれなくなって、ジューゴの背に手を当てて慰めた。日本人だろうと、慣れていなかったら難しい。