【ナンバカ】ひとひらの言の葉 (ページ29)

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Word.0029　四巴ページ29

「相手を威嚇する発言は慎め、サル、キジ。見苦しいぞ」

猿とキジの眉間に青筋が走った。二人はつかつかと四舎主任の方に歩み寄り、これでもかとメンチを切り始める。

なんというかここの看守はみんな、煽り耐性がないようだ。

「てめぇのその口調が毎回イライラすんだよ、大会前に戦意喪失させてやろうかこのクソ犬？」

「貴方もしかして自分が勝てないからアタシらに当たってるの？なんたって四舎十房はたった一人ですものね〜」

「──好きなだけ言っていろ。私の敵はお前たちではない」

桜色の瞳がすがめられる。その先にいるのは私たち──いや、正確にはハジメ。

四舎主任はしばらくハジメのことを睨みつけていたが、やがて羽織を翻して立ち去っていく。猿とキジはその背中に嫌味をぶつけた。

『ハジメって喧嘩売られやすいの？』

「知らん」

続いて大会のルール説明に移った。

キーーーン……とスピーカーがハウリングしたかと思うと、けたたましいアナウンスが鳴り響く。

「へいへいへいへーーーい！代表として選ばれた看守共！囚人共に今一度大会のルールを説明するぜぃ！！ちなみに大会の実況解説を担当するのはこの俺MITSURU！みっちゃんって呼んでもいいYO！」

可動式の小さなステージに座してマイクを持つのは、サングラスを駆けた褐色肌の看守。

どうやったら新年早朝一発目からそんなハイテンションを貫けるのだろうか。

「この新年大会は五つの種目を勝ち抜きながら優勝を争ってもらうものだ！！一つの種目には人数制限があるものや全員参加のものもある！
　なお種目に出る代表は舎房側で決めていいぜぃ！！ただし必ず看守と囚人の組み合わせじゃなきゃ駄目だからな！
　囚人共！看守共！種目を勝ち抜いて優勝を目指してくれYOOOOO！！」

音割れなんて気にしないというスタンスのようだ。

物理的に耳が痛くなる声を聞いている私に、ニコが声をかけてきた。

「ねえ、コトハちゃんって欲しいものあるの？」

私は一瞬考えるそぶりをしてから、ページを繰ってこう書いた。

『ないしょ』

「えー、そっか……じゃあ僕も秘密にしとく！」

ニコは笑って言った。ニコの欲しいもの……だいたい想像はつく。ウノとロックが求めるものも予想できた。この三人は本気で種目に取り組むだろう。

ただジューゴは──何かを欲しいと言ってるのを聞いたことがない。欲がないタイプなのだろうか。