716 邪馬台国の中へ ページ9
「さあ、着いたぞ。ここが邪馬台国の首都だ」
歩くこと約三十分。
私たちは各々背伸びをして、その風景を見る。
外周は竹の柵でぐるりと囲まれており、人工的に作られたと思われる堀が、さらにその外側にある。
ピラミッドのような形の、背の低い家が何軒か並んでいるのが見えた。あとは櫓のような建物がいくつかあり、南の方には市場らしきものが見える。西には田園風景が広がっていた。
「これが邪馬台国かあ……道とかもちゃんと整備されてるんだね？」
「教科書の中に遺跡の写真があったが、実際はそれよりもさらに発展していたようだな」
クロエと剣城がそんな会話をしている。
首都というだけあってか、行きかう人々の数も多い。街の中には、平和で溌溂とした時間が流れているように見えた。
「──日ノ巫女様！」
私たちが街へ足を踏み入れるのとほぼ同時、道の向こうから一人の男性が駆け寄ってきた。
すらりと背が高く、その瞳には理知的な色がある。日之芽さんはその人に「
久米彦さんは私たちに視線を走らせ、「彼らは？」と、 低い声で呟く。
「
「学徒？ 来客の予定は入っておりません。よもやそいつらは、
久米彦さんの眉間にしわが寄った。
「……狗奴国ってなんですか？」という影山の囁きに、フェイが「邪馬台国連合と敵対していた軍事国家といわれているね」と返す。
背中に冷や汗が流れた。私たちがその狗奴国とやらから送られた刺客と勘違いされれば一巻の終わりだ。
しかし日之芽さんは、そんな私たちの不安には一切気付かない様子で言った。
「密偵がこんな大勢で、しかも丸腰でやってくると思うか？ 私が狩りに出かけていなかったら、彼らは道に迷って力尽きていたかもしれない」
「そもそも貴方は狩りに出かけるような身分にないのです。国を統べる王であるという自覚をお持ちになってください」
「「──ええっ？！」」
私たちの大合唱が響いた。日之芽さんはぎょっとして私たちの方を振り向く。
開いた口がふさがらなかった。そんな、まさか。この人が国を統べる王？ ということはつまり、考えるまでもなく──。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月29日 12時
