715 日の光を浴びて ページ8
翡翠色の目は油断なく私たちを観察している。突如現れた奇妙な一団に対する扱いを決めかねているようにも見えた。
「俺たちは、その……」
神童が前に出てくれたが、後に続く言葉が思いつかないのか、しどろもどろとなっている。
女性の眉がひそめられた。
──まずい、まずい、まずい。初っ端から出鼻をくじかれてしまってはどうしようもない。
そう思った私の足は、勝手に一歩を踏み出していた。
「私たちは……そう、邪馬台国へ行きたいのです。勉強のために」
全員の視線が私に集中した。私は口を動かしながら、必死に頭を巡らせる。
この人が誰であるのかはわからないが、矢に貫かれないで済む言い訳を考えねばなるまい。そう思った。
「女王の治める大国の政治体制や経済、文化といった……そういうものは非常に優れていると聞き、その、自分たちは学徒として、北の国から参りました」
「北と言うと、
「え？ っと……ふ、不弥です」
「不弥から学徒の一団……そういう話は知らないな」
女性は顎に手を当て、独り言のように呟いた。
流れた沈黙の間を、鳥のさえずりが縫っていく。
二者択一で適当に不弥と答えたのが、吉と出るか凶と出るか。果たして答えは──ひとまず、吉だったようで。
「まあ、どのみちここでこうしていても、人の匂いを吹きつけた猪に喰われてしまうな。人里まで案内しよう」
女性は口元に笑みを浮かべながらそう言って、弓矢を矢筒にしまった。
私は二、三度、目を瞬かせる。そうして我に返ると、身体をくの字に折り曲げた。
「あ、ありがとうございます!」
みんなもそれに続いて、口々にお礼を言った。
女性は頷いて、私たちを先導し始める。
「ナイスだ、A！」
水鳥に小声で囁かれ、私はちょっとはにかんでみせた。
どうやら時空を巡る旅を経て、私にも胆力がついたらしい。その場しのぎとはいえ筋の通った言い訳を並べ立てられたなんて、自分でも驚きだ。
「遠路を旅して疲れただろう。私のような土地勘のある人間と出会えて、運が良かったな」
女性が振り返って、私たちを労った。その口調はからりとしていて、少しも恩着せがましくなかった。
「おっと、まだ名乗ってもいなかったな。私は
日之芽さんが笑うと、その赤い髪が太陽の光に照らされた。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月29日 12時
