713 錆びた鏡面 ページ6
「数百枚かあ……そんなにいっぱい鏡を持ってても、仕方ないと思うんですが」
「てか、その時代にも鏡ってあったんだな」
影山と狩屋がそんな会話をしている。
一理あるけれど、その時特有の価値観というものは、やはりあったのかもしれない。
それからすぐにタイムジャンプのメンバーが発表された。
──天馬、神童、剣城、私、フェイ、信助、錦、黄名子、太陽、霧野、トーブ、狩屋、影山。
ミキシマックスの力を得た面々を中心とした、盤石の布陣だ。
「ファイトやんね！ Aなら絶対女王になれるよ！」
「私は女王にはならないけど……」
「女王陛下、A様のおな〜り〜」
「もう、やめてってばクロエ」
今ので少し緊張がほぐれた。
銅鏡に視線を移す。その鏡面にはかつて、美しい女王の顔が映されていたのだろうか。
準備を終えた私たちはキャラバンに乗り込んだ。
鏡が台座にセットされると、車体はゆっくりと浮上していく。
「アーティファクトセット完了！ ワームホール周期確認！」
その時、ふと右手が握られた。隣に座っていた神童だった。
大丈夫だ、と語りかけてくれているのが、無言でもわかった。私は頷き返し、大きな手を軽く握り返す。
──私は私にできることを、精一杯やるだけだ。
「タイムジャンプ5秒前！ 4、3、2、1──タイムジャーーンプ！！」
ワンダバの掛け声でキャラバンは急発進、私たちは女王の治めていた国へと飛んだ。
＊
「ここが、弥生時代の日本……」
天馬が周囲を見渡しながら言った。
ワンダバスイッチで素朴な麻の服に着替えた私たちが降り立ったのは、あちこちに動物の息遣いが感じられる、あたたかな林だった。
太陽の光が木々を透かして、地面にまだらな影を描いている。何をするにもちょうどいい気候に感じた。夏や冬でなくて助かった。
西暦225年、九州地方。この近くに卑弥呼が──卑弥呼が治める邪馬台国がある。
「とりあえず、人里を探そう。そこから卑弥呼についての手がかりを得るんだ」
さすがに何度もタイムジャンプしてきただけあって、段取りも手慣れてきた。フェイはひとまずの指標を私たちに示してから、注意深く林の中を進んでいく。
「弥生時代は確か、大陸から稲作が伝わってきた時期だったんだよな」
「ああ。他にも鉄や青銅といったものが伝わって、それらが農具や武器に加工され使われていたようだ」
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月29日 12時
