753 その進撃は矢の如く ページ46
狩屋と影山をベンチに残し、時空最強イレブン中心の盤石の布陣。私はセンターハーフの場所に配された。
位置に着く直前、神童とクロエが私に頷きかけてくれた。それは会話をするよりもなお強く、私の心を勇気づけてくれた。
二人だけじゃない。天馬や黄名子、剣城……チームのみんなが、私のことを信じてくれている。
息を吸い、吐く。化身として私の中に戻ったクロエの鼓動を感じる。
やるんだ。何が何でも、絶対に。
──銅鑼の音で、開戦の火蓋が切って落とされた。
こちら側からのキックオフで試合開始。フェイからパスを受け取った剣城が、一歩を踏み出したその瞬間。
「「『ハイパーダイブモード』──『人工化身プラズマシャドウ』──《アームド》」」
赤黒の電子が一斉に出現し、フィールドを埋め尽くした。離れたところから試合を観戦していた兵士たちの口から、悲鳴にも似たどよめきが上がる。
それらは瞬く間に光の帯となって、パーフェクト・カスケイドの身体に鎧として収束した。
私たちは唖然としたが、すぐに気を引き締める。最初からフルスロットルで来るのなら、こちらも全力で迎え撃てばいい。
しかし、その考えは一瞬で打ち砕かれた。
風が吹いた──と思ったら、私の傍を選手が通過していた。
二秒後に状況を理解して、慌ててゴール前へ向かう。しかしその二秒というのは、敵がシュート体勢に入るのには十分すぎる間だった。
「「『シュートコマンド20』」」
「《ミキシトランス・劉備》──『大国謳歌』！」
信助の奮闘虚しく、ゴールネットが揺れる。
0-1。私たちは呆然と、地面に転がったボールを目で追うことしかできなかった。
……見えなかった。反応できなかった。こんなことじゃ、駄目なのに。前と同じ轍を踏むわけにはいかないのに。
「敗北が許されないのはこちらも同じ。我々は前回の経験を踏まえてさらにパワーアップしている。投降するのであれば受け付けよう」
愕然とする私たちに、レイ・ルクがアームドを解かないまま言い放つ。
それに負けじと、天馬が食い下がった。
「投降なんてしない──俺たちはこの試合、絶対勝ってみせる！」
そう……そうだ、まだ一点。諦めるには早すぎる。ここから巻き返せばチャンスはある。
雷門のキックオフで試合再開。
とにかく向こうにボールが渡ってしまえば、それがそのまま失点に繋がると思った方がいい。機を引き締めて駆け上がる。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月29日 12時
