738 取り戻すために ページ31
しんと静まり返った場に、木々のざわめきだけがこだまする。
丁寧な口調を装ってはいるが、有無を言わせぬあまりにも強引な手腕だった。これが
「続きがまだある」
──なお、戦に関しては『サッカー』と呼ばれる競技で勝敗を決したく思う。
我らは優秀な兵士を揃えて待っている。いい仕合ができるよう、貴国も迎え撃つ準備をされたし。
狗奴国国王・
私たちの顔が引き締まる。覚悟してはいたが、いざこうしてみると、喉元に刃を突き付けられたような感覚があった。
「間違いない。エルドラドが狗奴国に介入したんだ──僕たちを倒すために」
フェイが誰にともなく呟く。
この展開は、信長の時と同じだ。タイムパラドックスを起こさないために、その時代の事件や人物を使う。今回はそこに、国の威信がまるごとかかっている。
背負いきれないほどのプレッシャーが襲い掛かってくる気がしたけれど、私はどうにかそれを跳ね除けた。今までだって勝ってきたんだから、今回もなんとかなるはず。
「サッカーとは、さっき言っていた、君たちの守るべきものだな」
「っ、はい」
不意に日之芽さんに問いかけられ、私は若干声を上擦らせながらも顔を上げる。
目が合ったけれど、日之芽さんはそれ以上言葉を紡ごうとしなかった。言葉を用いなくとも、相手の目を見れば十分だと言っているようにも思えた。
日之芽さんは深呼吸を一つする。そうして瞳に静かな光を漲らせ、静かでありながらも朗々とした声で言った。
「我々は
「日ノ巫女様！」
「議論している時間もない──私はこの者らを信じ、そして賭けてみようと思う」
その力強い言葉に、久米彦さんは折れたみたいだった。もしかしたら今までにも、こんなやり取りが何度もされていたのかもしれないと思った。
「女王がそう仰るのであれば、従います」
「ありがとう」
日之芽さんは、答えを求めるように私たちに視線を走らせる。
こちら側の覚悟はもう固まっていた。私たちは決意を胸に拳を握り締めた。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月29日 12時
