736 揺るぎない証明を ページ29
「姉上、これは……」
日之芽さんは真剣な瞳でこちらを見つめている。逸らしてはいけない気がして、私は翡翠の双眸を見つめ返した。
「何か……事前に細工をしたのでは、ないのか」
「いえ。彼らがそのような準備をする猶予はなかったはず……」
沈黙に耐えかねた私は、思い切って身を乗り出した。
「えっと、日之芽さん……これで私が、貴方の力を借り受けるに足るという証明になりましたか」
日之芽さんは私の問いに直接答えることはなく、サッと右手を上げた。どうやらそれは兵士への合図だったらしく、彼らは我に返って桶の中の水を火にかけた。
ジュウッと音を立てて炎が消えていく。その様子を横目に、日之芽さんは私の前まで進み出てきた。
「見事であった……君の覚悟を見せてもらったよ。二言はない。私にできることであれば、力の限りを尽くそう」
凛とした声が鼓膜を震わせ、身体を巡っていった。
喜びと決意が同時にじわじわと這い上がってくる。言いようのない高揚に押されるように、私は勢いよく頭を下げた。
「あ──ありがとうございます！」
ここからがスタートラインなのだ。自分が日之芽さんとミキシマックスできるよう、鍛錬を積み重ねないといけない。
残された時間は少ない。時空最強イレブンの一人になるために、私はみんなの何倍も努力する必要がある。
「でもよ、実際問題どういうことなんだ？ 火の上歩いて無傷って、普通はありえねえぞ」
水鳥の呟きをきっかけに、みんなの視線がこちらに集中するのを感じた。
クロエはさっきから、私の手をずっと握っている。私が無事であることを確かめるように。
炎と、私。さっきの不思議な感覚はなんだったのか。なぜ火傷を負わなかったのか。わからないことしかない。
しかしその話題は結局、宙ぶらりんのまま放置されることになった。
館の方から
「あの……
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月29日 12時
