733 焔の道 ページ26
王の言葉を聞いた男性二人は揃って驚愕の表情を浮かべていたが、すぐに室外へ出ていく。日之芽さんも、私たちにここで待機するよう言い置いてからそれに続いた。
部屋には数人の兵士と私たちが残される。気が抜けた私は、半ばその場にへたり込むようにして座った。
「A、かっこいいやんね〜！」
黄名子が膝立ちで私の横までやってきて、鼓舞するように肩を叩く。
私は息をつき、笑みを返した。自分でもあんな風に強気に出られたのが不思議だった。
「女王相手にあそこまでの啖呵を切れるとはさすがぜよ！」
「僕、あの言葉を聞いてビリビリ来ました！」
錦と影山に続けてそう言われ、私は自分の行動が少なからず吉の方に転がったのだということを知った。
反射的に神童の方を見る。力強く頷きかけられた私は、安堵のあまりあわや涙を流しそうになってしまう。自分の決断を信じてくれたみんなには、感謝してもしきれない。
「にしても、『証明』というのはどういうことだろうな」
「何か試練が出されるんじゃないかな？ それをクリアしたらオッケー、みたいな」
「仮にそうだとしても、生半可なものではないだろうね……」
剣城や信助や太陽たち一年生の会話を耳にしながら、私もそれについて考える。
ではどうやって証明するのか。言葉で？ 行動で？ 日之芽さんの性格を鑑みると、後者の方が可能性が高い気はする。
「準備ができました。皆さま表へ出てください」
十五分ほどしてから、久米彦さんが迎えに来た。
ここへ来た時と同じように、四方を兵士に囲まれながら私たちは館を出た。
＊
結論から言って、「試練が課されるのではないか」という予想は当たった。
しかしそれはあまりにも……あまりにも私たちの想像の斜め上を行く、過酷なものだった。
館の裏手に案内された私たちは、目の前の光景を見て息を呑む。
そこには縦十メートル、横二メートルほどの細長い道が作られていた──際限なく赤々と燃え盛る、炎の道が。
どうやら燃えない素材──煉瓦か何か──の上に発火材が敷き詰められているらしい。風が吹くと炎は時々煽られ、勢いを増す。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月29日 12時
