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「君たちの瞳を見るに、嘘はついていなさそうだが……残念ながら子供だましの言い訳と捉えることしかできない。もう一度だけ弁明する機会を与えるから、私たちが納得するような説明をお願いしたい」
私はその瞬間、自分が人生の岐路に立っていることに気づかされた。
みんなが小声で話し合う声が、さざ波のように遠くで聞こえている。
ここで終わってしまったら、全てが駄目になる。チームのみんなが励ましてくれたのも、クロエがずっと隣にいてくれたのも、家族が私の背を押してくれたのも、全部。
この旅で力を受け取るのは、他の誰でもなく私。ならば私が立ち向かわないでどうするのだ。
──抗え、食らいつけ。
「私たちは！！」
その大声が自分の喉から出たということに、私は最初気がつかなかった。
そうして頭から生えた見えない糸を引っ張られるみたいに立ち上がっていた。
「私たちにも譲れないもの……サッカーという守りたいものがあります！ 背を向けて逃げることは許されません。何度も命の危険にさらされながらここへやってきました。一歩も退くことはできないし、こちらにそのつもりもありません。日ノ巫女様の力が必要なのです。力を示せとおっしゃるのであれば、私は私の持つ全てを賭けてみせます！」
一息に言ってから私は自分のしたことに気づき、そのまま呆然となった。与えられた弁明のチャンスを、こんな、いち個人の激情をもってして費やしてしまうなんて。
だけどすぐに気を取り直して拳を握る。私が言葉にした思いと同じものを、みんなもきっと持っているはずだ。
日之芽さんは、私の大音声に眉を顰めるでもなく、「頭が高い」と制するでもなく、ただただ静かに問いかけてきた。
「私の力が必要だと？ サッカーを救うために」
「はい」
室内の緊迫感が嘘のように、外にはのどかな春の空気が漂っている。
目を閉じ、開き、顔を上げる──日之芽さんのその一連の動作は、儀式的な雰囲気を纏っていた。
「なら、私の前で証明してみよ。君の思いが本物かを。君が私の力を受け取る器として相応しいのかを。今ここで」
その視線は一人の女性としてではなく、一国を背負う王としてのものだった。
ぐっと言葉に詰まりかけた私は、どうにか頷く。もう後には退けない。それでもみんなが後ろにいるという事実が、私の心を勇気づけさせた。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月29日 12時
