731 静かな問いかけ ページ24
「昨日、
──やはりか。予想は果たして的中した。
昨日の今日、丸一日で嘘が露見してしまった。邪馬台国から不弥までの距離はそれほと離れていなかったらしい。きっとあれからすぐに馬を飛ばしたのだろう。
「そして先ほど、使者が帰ってきた──『不弥からそのような一団は派遣していない』という報告を持って」
声こそ出さなかったが、私たちの反応は様々だった。
行動次第で、私たちの命運が決まる。それこそ今まで十の力を集めてきたのが、全てふいになってしまうかもしれない。そう思うと心臓の鼓動が早くなった。
「場合によっては、間者として君たちを投獄しなければならなくなる。私としてもそのようなことはしたくない。だからどうか本当のことを話してくれ。君たちがここに来た目的を」
その言葉を聞いて、私は顔を上げる。
──ああ、この人は私たちのことを信じたいんだ。心根がどこまでも真っ直ぐだから……罪の宣告をしたくないのだ。
目的のためとはいえ、騙してしまったことを心苦しく思った。
「ここは誤魔化さず、正直に話した方がよさそうだね。信じてもらえるかどうかは別だけど……」
フェイの囁きに、隣にいた神童が頷く。私も同感だった。この人の前で、これ以上の嘘方便は通じない。
天馬が膝を進め、日之芽さんの瞳を真っすぐに見つめる。
「俺たちは──未来から来ました。日ノ巫女さまの力をお借りするために」
大人三人の眉がぴくりと動いた。
「では、先の世から来たという証拠を示すことはできますか」
「そ、れは……」
天馬が口ごもるのは当然だった。卑弥呼の詳細な活躍は、一切後世に伝えられていない。実在していたかどうかすら怪しいという意見もあるのだ。だから邪馬台国に、これから何が起こるかを当てることはできない。
未来の技術……フェイの持つ道具などを見せるのもグレーだ。時代にそぐわない物体が、混乱を招きかねない。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月29日 12時
