730 物々しい呼び立て ページ23
「アンタねえ……！」
「落ち着け、クロエ」
今にも飛びかかりそうな勢いのクロエを、剣城が制する。
とにかく練習に戻ろう。そう言いたいのに、私の喉からは微かな息しか出なかった。
「──みなさん」
と。ぼんやりしていた意識を、男性の声が覚醒させた。
見れば
それぞれの手には槍のようなものがあった。穂先は鞘にしまわれているけれど、物々しい雰囲気を前に私たちはたじろぐ。
「お話したいことがありますので、迎賓館へお戻りください」
丁寧だが有無を言わせぬ口調だった。
私たちが顔を見合わせているうちに、兵士たちは一同を包囲するように素早く動く。
──どうやら、楽しい話がしたいわけではないようだ。
「あの、話とはどういう……」
太陽が控えめに尋ねたが、久米彦さんは軽く目を合わせるだけで何も言わない。
まさか、私たちが学徒ではないということがばれたのでは。そうなると目的が達成できなくなってしまう。
フェイたちとこっそり目配せをしたが、内緒話のできる雰囲気でもなかった。半ば罪人のような気分で歩き出した時、私は視界の端で一人の兵士が難升米に話しかけているのを見た。
「難升米殿」
「なに」
「
「わかった」
二人は私たちとは違う方向へ歩を進める。
難升米は一度だけこちらを振り返ったが、興味が失せたようにすぐ前を向いた。
＊
迎賓館の広間に集められた私たちは、床に腰を下ろす。昨日と違うのは、部屋の四方に兵士たちが控えているということだ。
向かい合って座すのは
日之芽さんの翡翠色の瞳には、信頼もない代わりに軽蔑もなかった。膝の上で両手を揃え、私たちの顔を一人一人見つめている。
手に汗が滲んできた。こういった窮地は何度も経験しているはずだけれど、慣れるなんてことはやっぱりないのだった。
こちらから声をかけようかと思うほどの長い沈黙が流れた後、日之芽さんが口を開いた。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月29日 12時
