726 相いれない相手 ページ19
それから私と神童は少し離れたところで、合体技の練習に取り組んだ。
やっぱり、いいところまでは行くのだが、終盤で勢いが削がれてしまう。傍で見ていたクロエに何が足りないと思うか聞いてみたけれど、申し訳なさそうな顔で首を横に振られた。
「息も合ってるし、今にも完成しそうな感じなんだけどなあ」
足を伸ばして座るクロエは、後ろの地面に両手をついて空を見上げる。
技が完成しないのは多分、私の方に原因がある。さっきミキシマックスが成功しなかったように、自分の中にまだ迷いがあるのだろう。
「どうしたんだ？」
神童に問いかけられ、顔を向ける。
やっぱり神童の目は誤魔化せない。私はやや自嘲気味に笑いながら、なんでもない風を装って口を開いた。
「さっきの
初めてボールに触れてあんな完璧なプレーを見せられたら嫉妬する気も起きない。
難升米が雷門に加わったら、かなりの戦力増強になるんじゃないか……そんな馬鹿げたことを考えかけて、やめた。難升米がそうするメリットがない。
「私あの子、苦手かも」
──クロエがそう言ったので、私と神童はちょっと驚いてその顔を見た。
クロエが誰かを苦手と言うのは初めてだった。もちろんそりの合う合わないはあるだろうから、驚くようなことでもないんだろうけど。
「話しかけても反応返ってこないし……自分が話したいと思った時だけ口を開くみたいな子だなって」
どうやらクロエは先ほどの練習中、何度か難升米と会話を試みたようだった。
だけど無視されるのが八割で、返事が来る二割は「そう」か「へえ」といった簡素すぎる応答。おまけに本から一度も顔を上げなかったらしい。
見えている世界が、私たちとはそもそも違うのかもしれない。
「それにさっきのプレーもなんかこれ見よがしじゃなかった？ みんなの中に混ざるでもなかったし、『これくらい朝飯前よー』みたいな感じがプンプンしたんだけど」
「あー、まあ……そうなのかな？」
曖昧に相槌を打ち、神童とこっそり肩を竦める。
どうやらクロエの中の難升米は「澄ました嫌なヤツ」みたいだった。そう思ってしまうのも、まあわからないではないけれど。
クロエは空になったボトルを持って、一人怒りながら葵たちの方へ歩いて行った。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月29日 12時
