724 女王と共に ページ17
「何をしているんだ？」
ふと、別の声が外から聞こえてきた。
振り向いた私たちは目を丸くする。軽装の
「ひ、えっと、日ノ巫女様」
「その呼び方はよしてくれ。今の私はただの日之芽だ」
緊張して肩を強張らせる葵に、日之芽さんが言う。
仕事が終わったのだろうか、それとも抜け出してきた……？ ともあれ目標とする人物が思わぬタイミングで現れたことに、私の中には密かな緊張感が生まれた。
「それで、今は何を？」
「サッカーです。足でボールを操って、相手のゴール……えっと、守られている部分に入ったら得点になります」
「へえ、不弥ではそんな遊戯が流行っているのだな」
フェイの答えに、日之芽さんはサッカーボールを持ってためつすがめつした。
翡翠色の瞳がいきいきと輝いている。この人はきっとこうやって、色んなものに興味を持ってきたのだろう。
「邪魔でなければ、私も混ぜてくれないか？」
だからそう言われることも、案外想定内だった。
「もちろんです、一緒にやりましょう！」
天馬の言葉に異論が出るはずもなく、一国の王を交えてのサッカーが始まった。
王の身体に傷をつけでもしたら……という小さな危惧は杞憂だった。そもそもこの人は弓を背負って単身山に狩りに行ける人だ。
さすがに
難升米はいつの間にか杉の木陰に戻って再び本を開いている。そうしている姿はまるで彫像のようだった。
「いやあ、さすがに少女の頃のようには身体が動かないな」
しばらくプレーを楽しんだ後、日之芽さんは立ち止まって額に浮いた汗を拭った。
燦々と照る太陽を背負って立つその姿は凛々しい。私は頭の中でそこに自分の姿を重ねてみたけれど、当然ながらしっくりこなかった。
「──そうだ、今ならいけるのではないか？！」
ふと、背後でそんな声がしたかと思えば。
巨大な熱波が私を包んだかと思うや否や、すぐに消える。
一体何かと首を巡らせれば──ワンダバがミキシマックスガンを構えた状態でいるのを見て、私は驚愕した。
ミキシマックスを試みて失敗したのだ。怪しまれるから安易に試みるのはやめてくれって、いつも言っているのに！
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月29日 12時
