719 念には念を ページ12
私たちが案内されたのは迎賓館の大広間だった。見た目よりも造りはしっかりしていて、中も広々としていた。正面の壁には神獣鏡が飾られている。
私たちは床に座って
「なんか、今までにないくらいスムーズに事が運んでますよね」
「この調子なら、すぐに目標達成できそうぜよ！」
狩屋と錦の言葉を、私は窓の外を見つめながら聞いていた。太陽はちょうど真上にのぼっている。
確かに、一日目にして卑弥呼に会えただけでも僥倖なのに、その上私たちに対して好意的な印象を持ってくれている。
このままいけば、あわよくば。しかし何事も、そううまくはいかない。
「いや、パーフェクト・カスケイドの動きにも注意するべきかもしれません。あいつらが何もしてこないとは考えにくいですから」
「太陽の言う通りだと俺も思う。卑弥呼のオーラを得る機会をうかがいつつ、空き時間は今まで通り特訓にあてるべきだ」
二人の言葉に、全員が同意した。
向こうはきっと手段を選ばず、私に襲い掛かってくる。いつでも迎え撃てるようにしておくべきだ。
「それにしても日之芽さん、美人やったやんね〜。その上優しくて仕事もできるって、もう完璧やんね！」
「うん、そうだね……」
黄名子に話を振られて、頷く。
あの人には不思議な魅力がある。人の上に立つ王というよりは、人と一緒に並んで歩いていくような──そう、まるで天馬みたいな。
なんでもできる日之芽さんと、平凡な私……いや、偉人と自分を比べたってどうしようもないか。
と、広間と廊下を仕切る扉が開いて、日之芽さんが入ってきた。後ろに四人の人を連れている。
「やあ、待たせたね」
その服装は先程とは打って変わって、気品あふれるものだった。
薄桃色の生地に金の縦縞模様の上品な衣をまとい、同じ色の薄い
一緒に部屋に入ってきた人は、
私たちは自然と姿勢を正した。
向かって正面、一段高くなっているところに置かれた座布団に日之芽さんが腰を下ろす。
久米彦さんと壬麻斗さんはその両脇に立ち、女性は少し離れたところに控えた。
日之芽さんは私たちの顔を見回すと、嬉しそうに笑った。そして澄んだよく通る声で話し始める。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月29日 12時
