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「お前の戦う姿を見て、わかったんだぞ。ビッグなら一人でも大丈夫だ！」
ビッグには、ロックスターの跡を継ぎ、獣の谷のボスになるという大きな使命がある。いつまでも誰かに頼ってはいられまい──トーブはそう続けた。
それが自然の摂理なのだ。フェイも頭ではわかっているのだろうが、気持ちが追い付かないのか、はっきりと首肯することはできない。
「それは、そうだけど……」
「それに、一人になった時こそわかるんだぜ！ 本当に強いかどうかがさ！」
「……でも、ビッグは親を亡くしたばかりなんだ」
フェイが近寄ると、ビッグは嬉しそうにキュウキュウと鳴いた。フェイはその顔を優しく撫でてやる。
ビッグのオーラを手に入れたことで、心が通じ合ったのだろうか。いや、心が通じ合ったからこそミキシマックスが成功したのかもしれない。
「けど、新しい友達ができた」
その光景を見たトーブが呟いた。
フェイがビッグを見つめる瞳はとても優しげで、その奥に少しの切なさも見て取れた。
「よく頑張ったな、ビッグ……これでお別れだ。お前なら、きっと獣の谷の立派なボスになれるさ。僕はお前の力を借りて、戦い抜くからな！」
ビッグは返事をするように、また一声鳴いた。
別れの時間が近づいていた。雷門イレブンとトーブを乗せたキャラバンがゆっくりと浮上する。
その間ずっと、ビッグの長い鳴き声が、ガラス越しから聞こえていた。
「さよならって、吠えているみたい……」
葵が呟くのと同時、席についていたフェイが立ち上がり、扉のすぐ横の窓を開けた。
「ビッグ！ さよなら……元気でなーっ！！」
フェイとビッグ、二人の声が、遠く夕空に吸い込まれて消えた。
──それぞれの意志を、受け継いだ力を胸に。生きる時代は違えど、それぞれの目標に向かって歩き続けることを誓おう。
そんな強い意志が目に見えるようなやり取りだった。ワームホールに入る直前まで、ビッグの鳴き声は空気を震わせていた。
＊
現代に帰ったその足で、私は病院に行った。仕事が休みだった父さんに付き添ってもらう。
幸い骨に異常はなく、軽い打撲ということだった。湿布だけもらって帰った。
帰路は無言だった。父さんと二人の時はどちらもあまり話さないのが普通なので、居心地の悪さは感じない。
河川敷横の道に差し掛かった私は、診察を受けている間ずっと考えていたことを口にした。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月2日 11時
