705 12の力 ページ48
「12個目の力を手に入れに行くってことですか？」
「──そうだ。少し寄り道にはなるが、決して無駄にはなるまい。さらなる戦力の増強を図りに行く」
信助の言葉に、大介さんは今度ははっきりと頷いた。
そうして私たちに向かって、新たな力を発表する。
「12の力──卓越した天眼で勝利への道筋を描く、『英傑のリベロ』！」
──英傑の、リベロ。地に根を張るような力強い響きに、私は無意識に拳を握り締めた。
リベロには最後方から最前線、 全ての局面において重要な役割が与えられる。チームのカバーを行うことで、チームの攻守を引き締めるのだ。
「その力を手にする選手はもう決めておる。AA、お前だ」
突然指名された私はすぐには反応できず、目を瞬かせた。
そうして全員の視線がこちらに集まっているのを見て初めて、言われたことを理解した。目の前に浮かぶ大介さんをじっと見つめる。
「私、ですか？」
「そうじゃ。お前はこの旅の中で大きく成長した。さらなる時空最強の力を得ることで、チームの体勢はさらに盤石なものになる。その役割を担うのに相応しいのはAだ」
──私が、時空最強の力を。
そう言われてまず胸中に浮かんできたのは、大きな不安だった。本当に自分にできるのか、他に相応しい人がいるのではないか。
この先に待ち受けているであろう困難と苦労を想像し、ジャージの裾をぎゅっと握りしめたその時。
右肩に誰かの手が乗せられた。神童だった。
振り向けば神童だけではなく、みんなが期待と信頼のこもった眼差しで私を見ていた。
「大丈夫だ、俺たちがついている」
不思議だった。肩に感じる重みとその言葉だけで、私の心はスッと落ち着いていった。
クロエが口パクで「ファイト」と言ってくれているのが見える。私はそれにしっかりと頷いた。
私は一人じゃない。きっとなんとかなる──なんとかしてやるんだ。
「──わかりました、やります。時空最強の力を手に入れてみせます」
「うむ、その意気だ」
話がまとまったところで、クロエが身を乗り出した。
「それで、そのオーラは例えて言うなら誰なの？」
「ふむ、強いて挙げるなら……卑弥呼じゃな」
卑弥呼。それは有名な名だった。みんなの間にも「ああ、あの人物か」という雰囲気が流れる。
あまりピンと来ていないクロエに、フェイが簡単に説明をしてくれた。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月2日 11時
