【イナクロ】君へ贈る旋律第十五楽章【神童拓人】 (ページ46)

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703　栄光を胸にページ46

「もはや迷いはないようだな──それでこそ、我が力を受け継ぐ者だ。お前には絶対的な勇気と揺るぎない実行力がある。そして、そんな人間の元に人は集まる」

天馬は周りを見回した。その瞳には私たちが移っている。ここまで共に戦ってきた、そしてこれからも戦っていく仲間が。

「私はお前の中に、私の求め続ける王の姿を見た。苦しむ仲間を力付ける希望の風──それが松風天馬、お前だ。お前はなるのだ、みんなが安心して身を任せられる、本当の王にな！」

王の言葉は天馬だけでなく、私たちの心の奥深くにも浸透していった。

「忘れるな、お前たちが円卓の騎士であることを。この先どのような困難にも騎士の誇りと勇気を胸に、果敢に立ち向かうのだ！」

アーサー王はエクスカリバーを天高く掲げ、宣誓する。

「──円卓の騎士に栄光あれ！」

「「おうっ！！」」

＊

アーサー王と別れた私たちは、洞窟から少し離れた川辺にやってきた。

砂利の河原にあったものを見て、私たちは驚きに目を見開くと同時に安堵の息を漏らした。

キャラバンはどうやら無事だったようだ。そしてその運転席から顔を出した人物を見て、フェイが声を上げる。

「あっ、アルノ博士！」

「タイムキャラバンは時空の狭間に引っかかっておったわ。苦労したが、どうにか引っ張り出せたぞい」

さらっと言ってのけたが、この人はやっぱりとんでもなく凄い人なのではないか。

ともかくこれで自分たちの時代に帰れる。絵本の世界も楽しかったが、やっぱり自分の生まれ育った場所が一番だ。

私たちが全員乗り込んだのを確認して、ワンダバはキャラバンを発進させた。帰りの旅は行きとは違って安全なようだ。

ワームホールの中に入ると摩訶不思議、私たちの着ていた衣装は消え、いつもの雷門のジャージに戻った。

「あーあ、もうちょっと着てたかったのにメイド服」

クロエは不満そうだったが、水鳥はその後ろで「あたしは清々したぜ、もう御者役なんてごめんだね」と顔の前で手を振っている。

みんながわいわいと話すのを聞きながら、私は自分の手のひらを見つめた。

──残る時空最強の力はあと一つ。灼熱の熱風と激震する雷鳴の力で全てを貫く「オールラウンドプレイヤー」。

それは果たして、今の私に相応しい称号なのだろうか。

「ねえA、聞いてる？」

クロエに話しかけられ、私は考えるのを中断した。

胸の中はまだ完全には晴れ渡っていなかった。