702 打ち砕け ページ45
「A！」
後ろからやってきたみんなに手や肩を取られて、私はようやく我に返った。
間近にある神童の弾けるような笑顔を見て、ようやく自分が一点を返せたのだとわかった。
高く高く、空へ引き上げられるような興奮が沸き起こる。私はとびきりの笑顔でみんなに応えた。
「この勢いに乗って巻き返そう！」
「「おうっ！！」」
その後も風はこちらに吹いた。神童からのセンタリングが剣城へ渡る。
「《ミキシトランス・沖田》──『菊一文字』！」
二点目をもぎ取ることに成功した。あと二点だ。
私たちはパーフェクト・カスケイド相手に善戦を繰り広げた。黄名子と天馬の覚醒が、チームにさらなる追い風をもたらしていた。
「『やきもちスクリュー』！」
黄名子の新必殺技が決まり、三点目。
全員の力が合わさり、それが大きな推進力になっていくのが分かる。天馬や神童、全員と一緒に駆け抜けて──そうやって私たちは勝利を勝ち取るのだ。今までも、これからも。
「《ミキシトランス・ビッグ》──『王者の牙』！」
四点目、逆転のゴールが決まった。
そこで長いホイッスルが鳴る。試合終了──私たちは、完璧なサッカーを誇るパーフェクト・カスケイドを下すことができたのだ。
「やったあーーっ！！」
全員で喜びを分かち合う。
みんながいてくれたから、支えてくれたから。私は神童と目を見合わせて笑った。嬉しさで溢れそうになる涙をこらえる。
「やったじゃんね」
外に出てきたクロエが私の隣に並んで、言った。その顔はどこか誇らしげだった。
相棒が右手を顔の高さに挙げる。私はそれに応えた。
私とクロエのハイタッチの音が、晴天に高く吸い込まれていった。
＊
「では、そなたたちはこの地を立ち去るというのか？」
洞窟の出口、アーサー王に事情を説明した私たちは、王を中心に円を描くように跪いていた。
白紙になっていた最後のページは元に戻った。世界の危機は救われたのだ。
「俺たちは、どうしてもやらなくちゃならないことがあるんです！」
天馬の言葉を聞いた王はしばらく無言でいたが、ややあって力強く頷いた。
「よし、許す。旅に出て、己を磨いてこそ本物の騎士だ」
「アーサー王……！」
騎士道に終わりはない。常に己を磨き続けて初めて、さらなる高みを目指すことができる。
私たちは立ち上がる。天馬の肩に、王の大きな手が置かれた。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月2日 11時
