701 繋ぐ架け橋 ページ44
確かに天馬はリーダーとか、指導者とかいう言葉はしっくりこないかもしれない。
だけどキャプテンに必要なのはそれだけではないのだ。前に走るだけがキャプテンじゃない。
「今だ、ミキシマックスを！」
ベンチから大介さんの声が響く。
ワンダバはそれに合わせてミキシマックスガンの引き金を引いた。
アーサー王のオーラが天馬に受け継がれていく。そして……光が晴れた。
「ミキシマックス──コンプリート！！」
長い金髪を靡かせた天馬は、王者の風格を持ってそこにいた。
10の力──絶対的な勇気と揺るぎない実行力で、大地をも味方にする「キングオブミッドフィルダー」が、ここに誕生したのだ。
「A！」
名を呼ばれ、私は顔を上げる。黄名子がビシッと敵陣を指さしていた。
「ディフェンスラインはうちらに任せて、Aはバシッと一発決めてくるやんね！」
私は戸惑った。そんなことをしたら持ち場が。そう言おうとしたのを霧野が遮る。
「敵の意表を突くなら今しかない──Aがそれをやるんだ。さあ、行ってこい！」
背中を押され、数歩前に出る。
私は唇を噛んで、涙がこみ上げそうになるのを堪えた。思いが溢れて止まらない。
全員で天馬に繋げたプレーを、ボールを……私がゴールに叩き込むのだ。それが私の役割。流れを引き寄せる力。
「──わかった！」
駆ける足は軽かった。
前方では天馬が、ドリブル技で二人の選手を同時に抜き去って行っている。
「『王の剣』！」
天馬は私に気づき、パスを渡してくれた。
ディフェンスラインから私が上がってくることは予想していなかったのだろう、パーフェクト・カスケイドの反応が一瞬遅れた。その一瞬があれば十分だった。
「決めろ、A！」
神童の声が私の身体を後押しする。
私はゴール前に躍り出た。首筋に鳥肌が立つ。恐怖からではなく、高揚から来るものだった。
「『悠久の覇王クロエ』──《アームド》！」
私の呼びかけに答えて顕現したクロエは、鎧となって私の身体に収束する。
すべてをこのシュートに賭ける。己の中に何もないと思うなら、自分で一から作り出せ！
「『デュルテバーン』！！」
紅蓮のシュートは──フィールドの芝を焼き尽くしながら、ゴールへ突き刺さった。
1-3。ホイッスルが鳴る。着地してアームドを解いた私は、しばらく突っ立ってゴールを見つめていた。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月2日 11時
