697 答えはフィールドに ページ40
パスカットを試みようとしたが、駄目だった。まるで弄ばれるように、ワンツーで突破される。
そうしてあっという間にゴール前へ。
「「『シュートコマンド20』」」
「《ミキシトランス・劉備》──うわあっ！」
シュートの速度が、信助の反応速度を上回った。無情にもゴールネットが揺れる。
試合開始から十数秒。早くも追い込まれる展開となってしまった。これが……ハイパーダイブモードの脅威。
焦りが胸中に滲む。白亜紀の時と同じ轍を踏むわけにはいかない。
試合再開。
反撃の糸口を探す雷門だったが、しかしプレーが繋がらない。
正確な動き、正確なパス回し。アンドロイドたちの動きには癖が一切なかった。ゆえに綻びを見つけることも叶わないのだ。
「「『シュートコマンド20』」」
「《ミキシトランス・劉備》──『大国謳歌』！」
再びのシュート。信助が抵抗したが、虚しく破られる。
0-2。得点表示が奇異変わったところで、ハーフタイムに入った。
二点の失点で済んだ、と考えるべきか。後半戦でどう立て直すかが問題だ。
「松風天馬、これへ」
ベンチへ戻ると同時に、アーサー王が天馬を呼んだ。
私たちは水分補給をしながら、二人の会話を聞いていた。
「お前は何を迷っている？」
「俺には、やっぱりチームのキャプテンなんて無理なんです。リーダーとしての素質がないんです」
「ならばリーダーの素質とは何か」
「それは……キャプテンをやる上で、重要な素質です」
「では、キャプテンとは」
少しの間があった。天馬は伏し目がちのまま言葉を紡ぐ。
「みんなを引っ張って……的確な指示を出して、勝利に導くのがキャプテンの──」
「みんなの声を聞け。そうすれば、やるべきことが見えてくるだろう」
王の声には、人を統べる者としての重みがあった。不動の実行力をもってして、悪を打ち倒す者としての。
「行け。答えはフィールドにある」
アーサー王の言葉に、天馬は力なく頷いた。
「──A」
肩を叩かれて、私は我に返った。見れば神童と太陽、それに私の中から出てきたクロエが立っている。
司令塔二人を前にして、私の口は先に動いていた。
「ごめん……前半戦、結局何もできなかった」
せいぜいボールを目で追いかけることぐらいしか。
力がないというのは思い込みではない。事実なのだ。唇を噛み締める私を、クロエが心配そうな表情で見つめてくる。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月2日 11時
