695 先導する者としての矜持 ページ38
パーフェクトカスケイドの面々が、レイ・ルクの背後に現れる。
「我々は対戦を要求する」
──こいつらも物語の世界に組み込まれていたというわけか。
タイムワープ中の混乱に乗じたのだ。そうして先回りして、マスタードラゴンを洗脳した……。
「いいだろう。お前たちの挑戦、我が円卓の騎士が受けて立つ。いいな？」
アーサー王の問いかけに私たちは頷く。
負けるわけにはいかない。敗北の苦渋を舐めるのは、もうたくさんだ。
＊
ユニフォームに着替えた私の横にクロエが立った。
じっと見つめられ、どうしたらいいかわからなくなる。今の自分と共に戦ってくれるのかという疑問が頭をもたげた。
「えっと、私……」
クロエの険しい顔が、しかし数秒後には穏やかな表情に変わった。
「うじうじ悩んでる暇があったら、勝利のために突き進む！ 今までそうしてきたでしょう？」
バシッと背中を叩かれてよろめく。
──今ので気合を注入された感覚があった。それは何よりも心強い鼓舞だった。相棒が隣にいてくれるというだけで、私の中の鬱々とした気持ちは薄らいでいった。
頷き、クロエと拳を突き合わせる。クロエは黒い影となって私の中に収束していった。
「大変……！」
それと同時、茜の口から悲鳴が上がる。
見れば──絵本の最後のページが白紙になっていっていた。アーサー王がダークドラゴンナイトを倒し、王国に平和が戻る場面だ。
「パラレルワールドの時空が不完全になっているのだ……」
「この戦い、どうなるか分からないってことですか？」
影山の問いに、私たちは表情を引き締める。
もし試合に負けるようなことがあれば──この世界は消える。私たちと共に。
試合の勝敗が私たちの……いや、世界の命運を決める。絶対に負けられない戦いだ。
ここで、それまで黙っていた天馬が顔を上げた。
「神童先輩！ ほんとに……キャプテンは俺でいいんですか？」
そうして飛び出した言葉にぎょっとする。
天馬の瞳は真剣だった。今までずっと、キャプテンの役割について考えていたのだろう。冗談を言っているようにはとても見えない。
神童は鋭い口調で、天馬の発言を咎めた。
「馬鹿なことを言うな！ 雷門のキャプテンはお前だ！」
「でも俺なんかより、神童先輩の方がリーダーに相応しいんです！ 誰が見たってそうです……！ 俺がリーダーじゃ、このチーム──本当の力が出せない！ そうじゃないですか？！」
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月2日 11時
