682 襲い来る黒龍 ページ25
アーサー王がそう宣言したことにより、試合終了のホイッスルが鳴り響いた。
突然の打ち切りに、選手だけでなく私たちも困惑した。今からがいい展開だというのに、どうして。
フェイのデュプリたちは、どこか釈然としない表情のまま消える。
終了……駄目だったということだろうか。しかしそんな私の心配は杞憂だったようで、王は口角を上げて天馬たちに頷きかけた。
「──二人とも見事であった！ 合格だ！」
その言葉に、天馬とフェイはハイタッチを交わした。その周りにみんなが集まっていく。
私たちもガッツポーズで、二人の入団を祝福した。
突然終了と言われた時はどうなることかと思ったが……アーサー王はしっかり見抜いていたのだ。天馬とフェイが、円卓の騎士に相応しい志を持っているということを。
これで物語を先に進めることができる。
しかし、そうやって喜んだのも束の間。
北の方角から、突如黒雲が垂れ込めてきた。生暖かい不穏な風が、みんなの髪を靡かせる。
さきほどまでの晴天が嘘のようだった。黒い雲は、遠方に怪しい稲光を孕んでいて──
刹那、衝撃が私たちを襲った。地面が揺れ、私はバランスを崩す。雷が塔に落ちたのだ。
大きな瓦礫が、目と鼻の先に落ちた。私はクロエに支えられてなんとか立ち上がる。
そして──雲を突き抜け、上空から何かがやってきた。
それは巨大な黒龍だった。見る者の足を竦ませる雰囲気を持って、私たちに牙を剥いている。
「あれは……マスタードラゴン！」
アーサー王が身を乗り出す。
──あれが9の力を持つマスタードラゴン。黒騎士に操られた、賢者の頭脳を持つ龍。
見ればマスタードラゴンの頭には、まさにその黒騎士がいた。両手で角を持ち、操縦するような恰好を取っている。
ドラゴンは真っすぐこちらに──王と姫を狙って突進してきた。凄まじい風圧に、私の身体は竦む。
「みんな、守るんだ！」
「「はいっ！！」」
神童たちの掛け声で、メンバーは一斉に城の中へ戻っていく。
王はドラゴンに対して何度か呼びかけていたが、答えが返ってくることはなかった。
「メローラ、城の中へ！」
「は、はいっ！」
私たちは葵を庇うように、一緒にお城の中へと走った。
次の瞬間、ドラゴンの尻尾が唸り、バルコニーの柵を粉砕する。その衝撃で私の足は床から離れた。二、三メートルほどの距離を吹き飛ばされ、背中が柱に激突する。
それと神童たちがバルコニーに到着するのがほぼ同時だった。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月2日 11時
