681 唐突な終了 ページ24
「どうした、何か気になることがあるか？」
ふと、そうアーサー王に聞かれた私は、驚いて肩をびくつかせた。
慌てて首を横に振る。ずれたヘッドドレスを直しながら、私は頭を垂れた。
「あ、いえ、お気になさらず！ 下仕えの者の言葉など、あの……」
「第三者の意見は、地位や身分の如何にかかわらず貴重なものだ。思ったことを遠慮なく言ってくれ」
真っすぐな言葉に、そっとアーサー王の表情を窺えば、そこには穏やかな顔があった。
ここで私が何か言うことによって、テストの結果が左右されはしないだろうか。そう思って、私は自分の考えに否を下した。メイド一人にそこまでの力はない。
それに、ここで下手に天馬たちをおだてるようなことを言っても、この人はすぐに見破ってしまうだろう。結局、正直に喋ることにした。
「あの挑戦者……天馬は、良い動きをしていると思います。ただ時折迷いが見られるようで……何か自分の持つ悩みについて考えているのかもしれません」
王は「なるほど」と頷いて、天馬の方に目をやる。
クロエは私の視線を受けて肩を竦めた。そんなにビクビクすることもないんじゃない？ そう言っているみたいだった。
後半戦開始。
早速パスカットをした天馬が前に出る。それを霧野と狩屋が二人係で抑え込みにかかった。
「天馬、こっちだ！」
サイドから出てきたフェイがフリーだ。天馬はパスを出そうとして──その足が一瞬、固まった。
一瞬という間でも、フィールドの上では命取りになる。スライディングで体制を崩された天馬は、黄名子のディフェンス技でボールを奪われてしまった。
しかしこの危機をフェイが救った。プレーをカットし、ボールを外に出す。
試合再開。天馬の前に霧野が、フェイの前に黄名子とトーブが出る。
しかし天馬は、今度は迷わなかった。前方に向かって勢いよくボールを蹴る。
どこに蹴っているのだろう──みんなの疑問は、すぐに驚愕に変わった。
ボールはカーブを描いて、走り出したフェイの足にぴたりと吸い付いたのだ。天馬がワンツーで抜け出す。
「『魔神ペガサスアーク』──《アームド》！」
シュートは信助の身体を吹き飛ばし、ゴールに突き刺さった。
これで同点、試合は振出しに戻った。手に汗握る試合展開に、私たちも沸き立つ。そうして、次の展開をクロエと予想しようとしていた時だった。
「それまで！ これにて入団テストを終了する！」
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月2日 11時
