680 微かな違和 ページ23
「試合開始！」
天馬たちのキックオフで試合開始。
パスを受けた天馬の前に、錦が立ちはだかる。
「『アグレッシブビート』！」
しかしそれをドリブル技で抜いた。技の練度が上がっている。
霧野が黄名子とトーブに素早く指示を出した。黄名子にマークされた天馬はキミロにパスを出した。
トーブにボールを奪われる前に、キミロは前線に上がってきていたフェイに繋げる。フェイはすぐにシュート体勢に入った。
「《ミキシトランス・ビッグ》──『王者の牙』！」
「《ミキシトランス・劉備》──『大国謳歌』！」
しかしここはしっかりと信助がセーブ。
何気ないワンプレーに見えたが、霧野は信助が止めやすいよう、DFをコントロールしてシュートコースを限定させていた。さすがの手腕というべきだろう。
信助の蹴ったボールは影山へ渡った。
「ウォーリー、スマイル！ 前に行かせないで！」
しかしデュプリの二人が、天馬の指示を受けてすぐに動く。
立ち止まりかけた影山に声をかけたのは太陽。バックパスで活路を開き、倉間へと繋ぐ。
「『サイドワインダー』！」
「『エクセレントブレスト』！」
しかしゴールを割るには至らない。
反撃の糸口を掴むべく、天馬たちは前線へ切り込んだ。
「ドリル、キモロ！ 上がって！」
「通させるな！」
円卓の騎士チームのゴール前にスペースができた。
そこを活路と見たか、フェイが走りこむ。しかし神童がパスをカットした。わざと誘い込んだのだ。
神童は神のタクトで采配を奏でていく。まるで選手一人ひとりを、音符に見立てているかのように。
ボールは錦から太陽、影山、倉間のダイレクトパスを経て、ストライカーの剣城へ。
行かせまいと、三人のデュプリが行く手を阻む。
「『フラクタルハウス』！」
連携技は、しかし巧みなドリブルで打ち破られた。
「『剣聖ランスロット』──《アームド》！」
化身の力の120パーセントが乗ったシュートは、ゴールネットを揺らした。
円卓の騎士チームに一点が入ると同時に、試合終了。天馬たちは一点ビハインドを背負ったまま、後半戦に臨むことになった。
ベンチで水分補給する天馬を、私はじっと見つめてみた。
──なんだかやっぱり、いつもの天馬じゃないような気がする。力が入りすぎてるようにも見えるし、力を出し切れていないようにも見える。
鳴れない状況に置かれて緊張しているのだろうか。いや、どうもそういう種類のものではない気がするけれど。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月2日 11時
