660 ほんのお遊び ページ3
その速さは、おおよそ人体の限界を無視したレベルに達していた。
先ほどのフェイのスピードの比ではない。目が追い付かない。身体が全く反応できない。
──こいつらは本当に、人間なのか。
「ここからが本気ってこと……？ 今までのが小手調べだったの？！」
私の漏らした呟きを拾ったのか、目の前にレイ・ルクが接近してきた。そうして口を開く。
「本気。それが最大限の力を発揮するという意味なのか。答えはノーだ」
「なっ……？！」
「君たちのレベルに合わせて、力を制御している」
次の瞬間。私の腹にはサッカーボールがめり込んでいた。
遅れて身体を襲う衝撃。肺から空気が絞り出される。
「A！」
私の名を呼んだ神童も、間もなくボールの餌食になった。
それからもメンバーは次々ラフプレーの嵐に巻き込まれる。地に膝をついた私たちは、息も絶え絶えになってパーフェクト・カスケイドの面々を見上げた。
「アームドの力を奪うために、こんな攻撃を……！」
「動きについていけない……！」
相手はまだ、力を制御しているというのか。今でさえ太刀打ちできないのに、さらに上のレベルを有しているなんて……。
ボールがタッチラインを超え、プレーが一時中断した時。太陽が前に出て私たちに指示を出した。
「みんな、敵の動きに惑わされたら守れない！ 全員、一定間隔を保ってゾーンディフェンスをやろう！ 自分の受け持ちのエリアを全力で守るんだ！」
私たちは頷く。現状、打てる策はそれしかない。
一同はそれから、それぞれの陣地を死守することに専念した。しかし一人の選手に二人がかりで立ち塞がるのがやっとだ。
攻撃を防ぎきることはできず、レイ・ルクのシュートを許してしまう。
「『もちもち黄粉餅』！」
「『ラ・フラム』！」
DF二人の必殺技は、しかし簡単に破られてしまう。
残る砦は信助のみ。信助は迫りくるシュートに真っ向から立ち向かった。
「『大国謳歌』！」
新たなキーパー技で、シュートの勢いは完全に殺された。
ファインセーブに沸き立つ信助と天馬だったが、それとは対照的に、太陽と神童の顔は晴れない。
「確かに、ゾーンディフェンスの効果はありましたが……」
「たった一度の攻撃で、ここまで消耗させられるとは」
シュートを防ごうと奮闘したDF陣の体力は大きく削がれていた。これでは第二陣、第三陣の攻撃を食い止めるのは厳しそうだ。
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月2日 11時
