670 錆びた宝冠 ページ13
「架空のおとぎ話だったとしても、その歴史の流れを生み出せる何かがあれば、その世界にタイムジャンプできるということですね？」
「さすが神童くん、飲み込みが早い！」
「だが、アーサー王が本当に存在したかどうかはわからない……そんな人物のアーティファクトなんて、あるのか？」
剣城の言う通りであった。方法が分かったところで、実際に行けるとなると話は別だ。
やっぱり所詮はおとぎ話の中の話か。そんな雰囲気が室内に流れ始めた時。
「──あるやんね！」
声を上げたのは、なんと黄名子だった。
全員の驚愕の声が揃う。行き詰った状況を打破できるならこれほど心強いことはないが、それが本当に可能だというのだろうか。
「うちの親戚に、凄い金持ちがいるやんね! 骨董品を集めるのが趣味で、確かアーサー王の王冠、持ってるって言ってたやんね！」
「その親戚って、この前遊園地のチケット譲ってくれた人？」
「うん、そうそう！ 借りてくるから、ちょっと待っててー！」
クロエの問いにそう返すと、黄名子はさっさとミーティングルームから退室してしまった。
とてつもないお金持ちだというその人物。文化財レベルのものを持つというのは本当なのだろうか。私はクロエと顔を見合わせて肩を竦めた。
待つこと約三十分。果たして黄名子は目的のものをもってやってきた。
テーブルの上に置かれたむき出しのそれを、みんなは遠巻きに見つめる。王冠は茶色く汚れて、ところどころひび割れていた。歴史ある品に見えなくもないが……。
「本当に本物なんですか？」
「偽物でしょう」
「ちゅーか証明のしようがないよなあ」
「だから本物だって！ 代々アーサー王の子孫に受け継がれていたものやんね！」
やいのやいのと言うメンバーに、黄名子が怒った。クロエがそれを、まあまあと宥めている。
「ううむ、ごちゃごちゃ言うだけでは前に進めない……黄名子の親戚を信じよう！」
ワンダバは渋い顔をしていたが、ここで議論していても始まらないと思ったのだろう、そう決断を下した。
そうしてタイムジャンプに同行するメンバーが発表される。
モニターに映し出された名前は──天馬、フェイ、剣城、倉間、神童、私、錦、太陽、霧野、狩屋、影山、トーブ、黄名子、信介。
「十四人、ですか」
「敵もパワーアップしてきている。控えのメンバーが複数必要と判断した」
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作者名：キメラ | 作成日時：2023年9月2日 11時
